茶屋を飛び出すと、みんな丸坊主で青い作業服を着ていた。額に汗をかいている。なかでも背中に18リットルのポリタンクを担いでいる子供や、ネギなどの野菜を背負っている子供は全身汗びっしょりである。どんなに軍隊調で眼光鋭い子供たちが来るのかと思っていたら、自由な雰囲気であどけない顔をした子供たちばかりだった。
ごく普通の少年たちだが…
「山っていいなぁ、空気がうまい」
「あっ、富士山がでかい」などといって、はしゃいでいた。ごく普通の少年でまるで高校の遠足である。
「さぁ、休んで、休んで」
私は、冷蔵庫で冷やしたジュースを紙コップに入れ、ご馳走した。
「うめぇ」などといいながらうまそうに飲んでいるのを見て、私までうれしくなった。
さっそく私は大鍋でうどんを煮た。茶屋のなかで休んでいる子供たちは子供っぽくて、それまで彼らに抱いていた不安など吹っ飛んでいた。もっとも着替えをしているとき、ちらりと2、3人の子供に入墨が見えたときはどきりとしたが……。
やがて、うどんができ上がり、食事になった。弁当と一緒にうどんをすすっている。私の分も数に入っているということで、刑務官の人たちと並んで一緒に食べた。食べながら、刑務官が「この冷蔵庫は、勝俣さんが今まで君たちが登ってきた道を運んできたんだ」と説明している。
「すごい急坂だったよ」
「ポリタンクだけでも大変なのに、おばさん力持ちだね」
私はいった。
「本当だよ。金時山の山姥だから、これくらいは平気なのさ」
大笑いになったが、子供たちは冷蔵庫と私を見比べて、「すげぇ、すげぇ」とひどく感心したようだ。
「でも、運んだとき、刑務官の方たちが手伝ってくれたからできたんだよ、私ひとりじゃできなかった。感謝していますよ」
私は改めて刑務官の人たちに頭を下げた。
食事が終わると、子供たちは刑務官から鉛筆と画用紙をもらって岩やベンチに座り、絵を描き始めた。富士山だとか芦ノ湖方面の風景をそれぞれ描いていた。刑務官によると、絵を描くと、心が落ち着くのだそうだ。私はそんな子供たちに、「くにはどこなの」とか「卒業したらどうするんだい」などと声をかけた。