幼いころ、多くの人が手に取ったであろう偉人たちの伝記。そこに〈ざんねん〉な一面は描かれていただろうか。功績の陰に隠れた偉人のダメな側面に、ユーモア溢れる筆致で光を当てた児童書の売れ行きが好調だ。
「伝記は児童向け書籍で定番のジャンルですが、親が読ませたいだけで、子供たち自身が本当に楽しんでいるのかどうか、長年疑問がありました。そこで児童書を手がける部署に移ったのをきっかけに、偉大な人物をもう少し身近に感じられるような、おもしろい偉人伝を作ろうと思って本書を企画したんです」(担当編集者の目黒哲也さん)
〈死体復活マシーン〉という特殊な目覚まし装置まで用いて部下を酷使した発明王エジソン、作る音楽の華麗さとは裏腹に下品な言葉が大好きだったモーツァルト、努力家だがとんでもない浪費家でもあった野口英世……偉人たちのダメぶりは強烈だが、どこか苦笑してしまうものばかり。
「小さなお子さん、特に男の子のいる親御さんが手にとって、ホッとされることが多いと聞いています。男子の突拍子もない行動に親御さんはナーバスになりがちですが、そんなときに偉人の、特に幼年期の奇天烈な行動を知ると、我が子が特別に酷いわけではないと感じて落ち着かれるようですね」(目黒さん)
子供に買い与えたはずが、親も思わず手にとってしまう児童書。今後、広く大人の読者も獲得できそうだ。
2017年8月発売。初版7000部。現在9刷10万部