遺言書のデジタル化に先駆け、サムライセキュリティはスマートフォンで相続に向けた準備が一通りできるサービスの提供を始めた。
相続準備の状況確認、財産目録の作成、必要な税理士等の検索、そして電子遺言書の作成までできるものだ。
また近年、相続では「デジタル遺産」の行方が問題となっている。
銀行口座の管理、投資などあらゆるもののデジタル化が進んでいるが、デジタル資産は本人しかアクセスできず、相続人がその所在を知ることが難しい。
サムライセキュリティのサービスでは、登録者の家族が情報を共有できる仕組みも取り入れている。
サービスは22年3月に開始し、昨年末から登録者が急増、現在約1200人まで増えた。
「登録者の半分は本人ですが、もう半分は、両親の代わりに子供が、または配偶者が代わりに登録しているケースなどで、代わりに登録している方の大半は女性です。男性は相続に割と無頓着ですが、女性は両親に、または夫に何か起きた時など、将来について真剣に考えているのでしょう。しかし、性別に関係なく、総じて、デジタルで相続情報を保管しておくことに抵抗感が少なくなっていることを実感しています」(濱川社長)
超えられない法律の「壁」
だが国民の側に抵抗感がなくなっても、電子遺言書が解禁される時期は不明だ。
前述の通り1年前の会議で検討されたが、議事録を読むと、出席した法務省の参事官や企画官の歯切れは悪く、デジタル化の目標時期は明記されなかった。しかもその後、検討は進んでいないのだ。
電子遺言書の場合、内容が決まっていれば作成自体は5分でできるという。
濱川社長自身も電子遺言書を作成して保管しているが、現時点では法律上は無効だ。
そのため電子遺言書を作成した後、それを印刷すれば「薄い文字」が印字される仕組みを導入した。遺言作成者が薄い文字をペンでなぞり、押印すれば法的に有効な遺言書が出来上がる。
「スマートフォンの画面で電子遺言書を見ながら、または印刷して見本として横に置いて遺言書を書こうとしても、やはり書き間違える。なぞるのが一番早いことが分かりました」(濱川社長)
デジタルデータをわざわざ印刷して、しかもなぞる……これが現在の法律なのである。