海外旅行費の高騰ぶり
いっぽうで、日本人の海外旅行需要は復活しているのだろうか。出入国在留管理庁出入国管理統計によれば、23年1月から3月までの日本人出国者数は累計で167万人。前年同期はわずか19万人であったから約8.7倍に増加している。だが2019年の同時期は491万人もの出国者数があったことと比べると、いまだ3分の1の水準にとどまっている。
ここから見えてくるのが、日本の置かれた現状である。5月8日からは日本に帰国する日本人についても、規制はほぼ従来通りのものに戻るとされるが、実際に海外旅行を予約しようとすると、旅行費用の高騰ぶりに目を剥くことになる。原因はコロナ禍で外国航空会社が機材を売り払い、パイロットやキャビンアテンダントのリストラをすすめたために、機材を買い戻し、職員を雇いなおすまでに相応の時間がかかること、世界的なエネルギーコストの値上がりで燃料費が値上がりしていることで、これらは航空運賃の高騰につながっている。また旅行先でのインフレによる物価の爆騰、これに円安が加わって、せっかく海外旅行に出かけても、財布がダメージを受けるだけに終わってしまうのだ。海外旅行はもともとタイパが悪かったのに加えてコスパも悪化。そのため日本人は気楽に海外にも出かけられない時代になっている。かてて加えて、日本人全体が内向き志向になっていることも海外旅行熱の再燃にはネガティブな要因になっている。
海外をやめて行く先は?
こうして旅行客は、少し値上がりしたと言っても、海外に行くよりも国内旅行ですませておこうという発想になる。私の友人のご夫婦の話。今年はコロナ禍もほぼ明けたので久しぶりに海外旅行に行こうということになったのだそうだが、海外旅行サイトをみて、そのあまりの爆上がりぶりに断念。代わりに選んだのが熱海の温泉。海外旅行と熱海温泉旅行が比較考量される日本にビミョーな将来を感じるのは私だけであろうか。