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母の葬儀で「お前、いくら稼いだんだよ」
母の葬儀で兄は、喪主を務めたにもかかわらず、大事なことは何一つしなかった。代わりに、母の死後に必要なさまざまな手続きや支払いはすべて私が行ったが、兄はそれが不満だったようだ。
葬儀を終えて多賀城に戻るというタイミングで、私をつかまえて、「お前、いくら稼いだんだよ」と言った。
「どういう意味?」
「お前、葬式でいくら稼いだんだよ」
「稼いでないよ」
「葬式代払っても、少しは残るんだろ?」
「残るわけないじゃん。これから先、どれだけ支払いがあるかわかってる?」
「なあ、頼むから分けてくれよ。このままじゃあ、多賀城に戻れないんだよ」
「そんなこと、なんで私に関係あるの?」
「お前、俺を見捨てるのかよ。頼むよ、これが最後だから」
私は心の底から恐怖を感じた。ついに兄はターゲットを私に絞ったのだと思った。
私は急いで財布から5万円を出すと、押しつけるようにして兄に渡し、「これが最後だからね」と言って、逃げるようにしてその場を離れた。兄は私の背中に、「ありがとうな!」と大声で言った。