2023年4月13日、WBCのチェコ代表選手団は、チェコ共和国の首相ペトル・フィアラに招かれ、 プラハ城の傍にあるフルザーンスキー宮殿を訪れた。WBCでチェコに初の勝利をもたらし、世界にその存在を知らせたこと、そして野球はもちろんスポーツの素晴らしさをチェコ国内に伝えたことから表彰されたのである。
選手たちの美しいスーツ姿、誇らしい表情、うれしそうな笑顔。WBCがチェコ野球の一つの到達点となったことを感じさせた。
ちょうどそのころ、選手たちの中にはWBC後も日本に残って旅を続けている者もいた。
「チェコの山田太郎」ヤン・ノヴァーク投手は大分で温泉めぐり
「九州の南、海に面した崖の上に公衆浴場があるって、友達に聞いたんだ」
連絡をもらった時、なんと彼は大分で温泉めぐりをしていて、このあとWBCの直前合宿をしていた宮崎に戻るところだというから驚いた。韓国戦で3番手を務めたヤン・ノヴァーク投手だった。
じつは彼の存在は、代表選手のリストを初めて見たときから、ずっと私の頭に残っていた。ヤンはチェコ人男性のもっともよくある名前の一つ、ノヴァークもチェコの代表的な名字。
「この人、チェコの山田太郎だ」
チェコのドカベン、ヤン・ノヴァークは捕手ではなく、投手である。WBC韓国戦では8回裏を3人で抑えた。チェコの国内トップリーグであるエクストラリガでは、高い奪三振率を誇り、2017年にはノーヒットノーランを達成。2021年に最優秀投手に選出されるなど、チェコを代表する29歳の左腕なのだ。
半月ほどすると彼と会える。私はすぐに「ドカベン」のイラストが入ったタオルを通販で取り寄せた。
東京でヤン・ノヴァークに会う
2ヶ月にわたる日本滞在の最後の数日、東京で過ごすヤン・ノヴァークと会うことができた。チェコ人は年に1度、2ヶ月ほどの休暇に出かける。今年は少し早めの休暇を、パートナーのテレザと一緒に日本で過ごすことにしたようだ。
「今日、原宿に行ったんだけど、雑踏の中からチェコ語が聞こえてびっくりしたよ。自分たち以外にもチェコ人がいるんだ、汚い言葉は使えないなと思って」