東京ドームの人工芝にこぼれ落ちていったチェコ代表の笑顔は、いまだに私たちの心を掴んだままだ。

 彼らのことをもっと知りたいと思い、SNSを通じて声をかけてみたところ、WBC後で国内リーグ開幕まで1週間という慌ただしい中、ありがたいことに返事をくれる選手たちがいた。

WBC日本戦、試合開始直前のチェコ代表チーム ©文藝春秋

チェコ代表の選手にコンタクトを取ったところ…

 一人は投手のダヴィト・メルガンス(21)。ブルノ生まれで、昨シーズンはイタリアのリーグに所属していた。今年から古巣ブルノのドラツィ(ドラゴンズ)に戻って、チェコ代表のパヴェル・ハジム監督のもとでプレイする。

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 イタリア仕込みの彼のインスタグラムでは、新宿ゴールデン街や浅草、代々木オリンピック公園などで撮影された、クールな写真が並んでいる。フォローしてみたところ、私のアカウントに投稿してあった文春オンラインの記事の写真に彼はイイネをつけてくれたのだ。

ダヴィト・メルガンス投手のインスタグラム(@d_megi3)より

 東京ではいろいろなところに行ったのですね、お土産も買いましたか、と問いかけると、

「東京では大量の洋服を買ったよ。あとはとにかく家族と友達へのおみやげをたくさんと、それから自分への野球用品だね」

 との返事が届いた。散財したのか、「洋服を買ったよ」の後には冷や汗をかいた絵文字がついている。おしゃれ好きな若い好青年、という印象だ。「自分への野球用品」は、野球が盛んでないチェコでは日本ほど多くの種類が売られていないという事情もあるのだろう。

「僕が野球を始めたのは、母さんが若い時にソフトボールをしていて、僕に野球を見せてくれたことがきっかけなんだ。僕はすぐに野球が大好きになって、他のスポーツはしていない。僕は100パーセントを野球に注いでいる」

 何気ないやりとりだったが、野球が好き、野球ができてうれしいという気持ちが伝わってきた。東京で見た熱量そのままだ。

「このレベルで世界最高の選手たちと野球ができて…」

 もう一人、初戦の中国戦で先発投手を務めたダニエル・パディシャーク(22)からも、几帳面で丁寧な人柄が伝わるチェコ語の返信がきた。プラハ生まれで、アメリカの大学リーグで活躍している学生だ。