これまでの人生でいちばん幸せだった瞬間を聞いてみると…
さて、パディシャーク投手にも日本で買ったものを尋ねた。
「できれば日本のものをすべて持って帰りたかったくらいだよ。僕はアニメの大ファンだから『NARUTO』と(『進撃の巨人』の)『エレン・イェーガー』のフィギュアを買ったんだ。それから日本のお茶がとても美味しかったから2袋買った。もちろん東京ドームの野球ボールも忘れずに」
垣間見えた彼の別の顔が興味深い。素直な返事に、つい、これまでの人生でいちばん幸せだったのはどんな瞬間だったか聞いてみた。私は今回の東京のエピソードが出るかなと期待していた。
「説明するのはむずかしいな。具体的に一つだけ挙げるというのはおそらく無理なんだけど、観客席に家族がいて、最高の仲間である選手たちとグラウンドで野球ができる。そういうときはいつでも、僕は幸せだと感じている。こういう時間が、無限に楽しむことができる、僕のいちばん好きな時間です」
彼のチェコ語の返事を理解したとき、私は息が止まりそうだった。メルガンスの時にも感じた、日本語にしたら嘘くさくなってしまうのではと怖くなるような、純粋でストレートな言葉。誰かにマウンティングしたりおもねったり、自分を隠したり見栄を張ったりすることもなく、そのときの正直な気持ちをフラットに表現することを、チェコ人たちは軽々とクリアしてくる。
「こんな感じで記事にできるかな。僕たちにとって、日本はお手本なんだ。日本はとても楽しくて、僕たちはいつか戻ってこれるようにって思っています」
「アジアの野球の方がチームメイトを信頼することができる」
彼の清々しい、やさしいメッセージを読みながら、私は神経科の医師であるハジム監督のインタビューを思い出していた。
「アメリカの野球では誰かがホームランを打つのをつねに待っているのに対し、アジアの野球では1番打者がヒットで出塁したら、2番打者が自分のアウトと引き換えに1番打者を進塁させようとする。
どちらも得点するための有効な方法だが、アジアの野球の方が選手はチームメイトを信頼することができる。他者を信用できる環境なら、人間は脳を平穏な状態にしておける。スポーツ選手の脳は、落ち着いている状態でハイレベルな成果を生み出すものだ。選手にプレッシャーがあったらそのチャンスが失われてしまう」(「iDNES」より)