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「打つこと、技術的なことだけでなく…」高津臣吾監督が告白した村上宗隆の“ある変化”

『理想の職場マネージメント 一軍監督の仕事』より #1

2023/05/17
note

 とにかく攻守にわたって山田がスワローズの宝であることに間違いはなく、まだ老け込む年齢でもない。4度目のトリプルスリー、とまではいわないが、相手バッテリーに圧をかけられる「3番山田 4番村上」というデュオの一翼を担ってくれるはずだ。もうしばらく、キャプテンとしてチームを盛り上げていってほしい。

山田哲人 ©文藝春秋

村上宗隆について

 監督として、チームに「村上宗隆」がいるというのは、本当に幸せなことだと思っている。村上が打席に立つと期待が高まる。2022年のシーズン、最終打席で56号本塁打を放った時は、本当にうれしかった。

 あの試合は、2打席目にヒットが出たことで三冠王がほぼ確実になり、自ら試合の最後まで出られるチャンスをつくった。3打席目はなかなか思ったような打撃ができず、どうかなと思っていたが、56号は飛距離、角度ともにまさに村上の一発と呼ぶにふさわしいホームランだった。

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 2022年は村上が三冠王を獲ったシーズンとして記憶されるだろうが、僕にとっては、村上という22歳の若者が人間的に大きく成長した年でもある。

村上宗隆 ©文藝春秋

チームリーダーとして必要なもの

 打つこと、技術的なことだけでなく、「ダグアウト内での仕事」ができるようになってきたのが大きい。長岡秀樹や内山壮真という後輩に、選手として必要なことを伝えたり、負けている時にもしっかり声を出し、仲間を鼓舞したりできるようになった。

 プロ野球には内向的な選手もいる。自分の仕事に集中するタイプの選手だ。ただ、村上のように打線の顔となる選手だと、そのパーソナリティがどうしてもダグアウトに影響する。村上は年齢を重ねるにつれ、課せられている役割をしっかり意識しているように見える。そうした仕事を僕から直接求めたことはないが、青木宣親、山田哲人といった先輩たちが、村上にチームリーダーとして必要なものを伝えていってくれているのだろう。

 振り返ると、メジャーリーグにも強いチームにはそうした「リーダー」がいた。僕がプレーしていた時期だと、ニューヨーク・ヤンキースにはデレク・ジーターがいた。ジーターがヤンキースの規範をつくっていたと思うし、そうしたリーダーがいるチームはブレない。青木、山田、村上ときて、将来的には長岡秀樹あたりにもこうした役割を担ってもらいたい。