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 この能力は、天性のものというより、どれだけ野球のことを考え、練習してきたかによって得られるものだと思う。たとえば、高校で鍛えられている選手は、投内連係の練習でもすぐに反応できる。星稜出身の奥川恭伸、龍谷大平安出身の高橋奎二――彼らのプレーぶりを見ていると、高校時代にあらゆるシチュエーションを想定して練習していたんだな、ということが伝わってくる。打撃についていえば、状況によって配球の読みができる選手は、結果を出せる可能性が高い。

 こうした賢い選手たちがダグアウトに26人いれば強いはずだ。

ファンをワクワクさせるようなスイングを見せる選手も大切に

 しかし、話をひっくり返すようで申し訳ないが、そうとも言い切れないのが野球の面白いところでもある。中には、吹っ切れた人材がいてもいい。

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 たとえば、1980年代から90年代にかけて近鉄バファローズで活躍したラルフ・ブライアントは、来日して打率3割をマークしたのは初年度の1988年だけ。あとは2割台(最終年は.194)だった。四球の数も、いまの時代とは状況が違っているが、村上のように100個も取るわけではなかった。

 たとえば、一死一塁の場面を迎えたら、普通、ダグアウトは「ライト前に打ってほしいな」と考えるだろうが、バファローズ・ベンチはそんな期待はしていなかっただろう。とにかくぶんぶん振り回していく。

 賢い選手がいれば監督としてはありがたいが、ブライアントのように状況なんかお構いなしにどんどん振っていく選手がいた方が、見ている側は面白いだろう。こういう思い切りのいい選手を何人許容できるかという話になるのかもしれないが、ファンをワクワクさせるようなスイングを見せる選手も大切にしたい。

 言い換えると、個性豊かな選手たちをそろえ、彼らがひとつの方向を向くようにするのがマネージメントの手腕だと思う。

 監督とは、こういうことをつらつら考える仕事だ。シーズンに入ると眠れなくなるのも当たり前だろう。中には実現したプランもあるし、夢のままで終わってしまったプランもある。うまくいかなかったことも含めて、野球のことを考えるのは面白い。つくづく幸せな仕事だと思う。

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