個性を重視して、ベンチの層を厚くする
チームの勝利のためには「顔」となる選手の存在が必要不可欠だが、エース、4番打者、クローザーの3人をそろえたところで優勝できるわけではない。やはり、ベンチ入りしている全員で勝ちにいくのが本当の野球だと思っている。
僕が2020年に監督になった時と比べ、ベンチの層が厚くなっていることは自負している。
レギュラーの選手が休む時の代わりの選手、あるいは試合の終盤になって代打、代走、守備固めで出場する選手のバリエーションが増えた。状況によって最適な選手が選べるようになってきたのである。2023年のオープン戦では、内野では赤羽由紘、外野では丸山和郁、俊足の並木秀尊らに出番を多く与えたが、シーズン中の戦術の選択肢は確実に広がるだろう。競争の成果が出ることを期待したい。
内外野を守れるユーティリティ・プレーヤーというのは大事な存在で、スワローズでは宮本丈がその役割を担っている。宮本の本職は二塁手だが、2021年の日本シリーズの初戦ではライトを守り、大飛球をキャッチするファインプレーを見せた。
配球の読みができる選手は、結果を出せる可能性が高い
また、宮本は代打の打席での「質」が高い。結果的にアウトになっても、何球も粘って相手バッテリーを消耗させる。キャンプの段階から練習の虫で、グラウンドに最後の最後まで残っている。
シーズン中も相手の研究を欠かさない。宮本が面白いのは、相手投手の研究をするにも、先発投手の映像を見ないことだ。自分に出番が回ってくるのは試合の終盤、右のブルペン投手と対戦することが多いので(宮本は左打ち)、相手のリリーバーの資料をジッと見つめている。彼のこうしたアプローチは、まさにプロだなと思う。
チームづくりの全般的なことでいえば、自分の役割を理解して準備を進める宮本のようにできるだけ賢い選手をそろえたい。「賢い」とは、野球という二度と同じシチュエーションがめぐってこないスポーツにおいて、すぐに正解にたどり着ける選手のことを意味する。