1ページ目から読む
2/3ページ目

 北欧やオランダなどでは、2メートルを超える人も珍しくないので長身用の棺がある。だが、日本でそのサイズの棺をすぐに用意するのは難しい。遺体搬送を行う会社では、大きな棺や長い棺を倉庫に保管しているところもあるが、背が高く恰幅のいい外国人の遺体となると、なかなかぴったり合うサイズがないという。

 そのような場合、日本ではどうするかといえば「長身の人は膝を少し立てる形に曲げ、棺に膝がぶつかって傷ができないよう緩衝材で膝部分を保護して、棺に納める」と搬送サービスを手掛けるK氏は膝に手を当てた。

大人用の棺に赤ちゃんの遺体が入っていたことも

 だがE氏が見てきた棺には、こうした気遣いのない棺もあった。

ADVERTISEMENT

「長身の人が首を横に曲げた状態で押し込まれていたり、身体を折り曲げて入れらていたり。膝を立てたまま棺の蓋を固定していたケースもある。その状態で押し込まれた遺体は、飛行機の振動で膝が蓋にぶつかって皮膚が破けたり、首の骨が折れていたりする」

 大きいばかりが問題ではない。K氏が愕然としたというのは、赤ちゃんのケースだ。「ベビーサイズの棺など、普段から保管している葬儀会社は少ない。これは中国から送られてきた赤ちゃんの遺体が入っていた棺」と差し出された写真を見て、声が出なかった。写っていたのは大人用の棺と段ボールのきれっぱしだ。

「こんな大きな棺の中に、生後3カ月の赤ちゃんが入っていた。黒いビニール袋で何重にも赤ちゃんをぐるぐる巻きにしただけでなく、遺体が動かないよう固定するため、棺の隙間に段ボールをぐちゃぐちゃにして突っ込んであった。段ボールだよ、ゴミじゃあるまいし。遺体の尊厳なんてこれっぽっちも考えていない。こんなことができる神経を疑った。あんな棺、家族には絶対に見せられない」

遺体をビニール袋でぐるぐる巻きにするのが中国方式

 生後3カ月というだけで心が痛むというのに、ビニール袋でぐるぐる巻きにされ、段ボールで抑えられ梱包されていたという遺体。いくら遺体とはいえ、そんな扱いをされていいわけがない。

 これまでの経験から、K氏は中国から搬送されてきた棺は、開ける時に注意が必要だと話す。中国から送還されてくる棺は、そのほとんどが二重構造ではなく、内側に鉄板が張られていない木製の棺なのだ。