自分の顔が嫌いでたまらない――そんな気持ちにとらわれてしまう「身体醜形症」という心の病。そうした悩みを抱えて美容整形を繰り返し、さらに症状が悪化する人が少なくないという。
ここでは精神科医・形成外科医である中嶋英雄氏の著書『自分の見た目が許せない人への処方箋』(小学館)を一部抜粋して紹介する。中嶋医師は「苦しみの原因は『見た目』ではない」と説く。ならば問題の本質はどこにあるのか。(全2回の1回目/続きを読む)
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まず質問させてください。
あなたは自分の顔のどこが嫌いでしょうか? 何を醜いと感じますか?
「身体醜形症(身体醜形障害・醜形恐怖)」と診断される方のなかでもっとも悩みが多いのは、やはり眼や鼻、口など顔のパーツです。頰やあご、顔の輪郭、おでこや頭の形が嫌いという人もいます。
もっと細かな部分を気にしている場合もあります。ニキビ跡やしわ、たるみ、肌質が気持ち悪いと訴える人もいますし、眉毛の濃さや形、肌の色が嫌でたまらないという人もいます。頭髪の薄さを気にしたり、逆に体毛の毛深さを悩んでいる場合もあります。
鏡を見て欠点を探してしまう
また、あるときは眼が嫌で仕方がなかったのに、今度は鼻が気になってどうしようもないという具合に、悩む部位がつぎつぎに変わることもあります。
「自分の見た目がぜんぶ嫌いだ」という方もいます。
嫌いでたまらないのに鏡を何度も見て欠点を探しつづけてしまい、見ているうちに嫌悪感がつのってよけいに自分を嫌いになってしまう人。他人と比べて劣等感にさいなまれ、マスクやサングラスを外せなくなり鏡を見られなくなる人もいます。
自分の見た目のせいで、人からジロジロ見られている気がしたり、嘲笑されているように感じることもあるかもしれません。1日に何度も服を取り替えたり、1時間もしないうちにメイクを直したくなったり、気になる部分を何度も何度も触ったり……ということもあるでしょう。なかにはつらさのあまり、リストカットや不適切な性行動に走ってしまう人もいます。