身体醜形症をめぐる誤解
身体醜形症とはどんな病気なのか──。よくある誤解は、「実際に醜い部分があるから悩んでいるんでしょ?」という理解です。
でも、ここまでお読みいただければおわかりだと思いますが、この病気は、本人の容姿が優れないために悩む病気ではありません。
実際、私のところにいらっしゃる方たちは、自分のことを「ブスだ」「見るに耐えない」「見た目が許せない」とことごとく否定します。ですが、私から見て本当にブスでブサイクだと感じる患者さんには、じつは出会ったことがありません。
そこで、もし私が「まったく醜くなんてないですよ、人並み以上に可愛いし美人ですよ。ハンサムですよ」と伝えて、「そうですか。よかったです。一安心しました」と反応してくれる方であれば、こころの病とは無縁です。
しかし、肯定的な意見を受け入れたくても、どうしても受け入れられない。
そんな気持ちがあなたのこころに住み着いているのなら、身体醜形症の傾向があると言えると思います。
本当は醜くなどないのに、醜いと感じてしまう「とらわれ」から逃れられない。そこには何らかのこころの問題が絡んでいます。なぜなら、あなたを醜いと判断しているのは、あなた自身にほかならないからです。
心の病の原因は「弱さ」ではない
身体醜形症と診断される方の多くは、わずかな左右の目の大きさの違いや顔や頭蓋のゆがみなど、「言われてみればそうかな?」という程度の微細な欠点(という表現が適切であるかも微妙なほどの小さな欠陥)を気にしがちです。
身体の先天的な疾患であることもありますが、ほとんどの場合は、誰にでもあるような左右の非対称や、その人の個性と言えるような形の特徴であったり、他人が見ても気づかない程度でしかありません。
それでも、そうした部位をきっかけにしてこの病にいたってしまうのには、性格的な傾向も関係しています。