インターネットで質問すると、人工知能(AI)がまるで人間が書いたかのような文章で回答する対話型AI「ChatGPT」が注目されている。だが、地方公共団体では鳥取県のようにどのような使い方をすべきかの検討から始めた自治体がある一方で、神奈川県横須賀市はすぐに導入するなど対応が分かれた。違いはどこにあるのか。それぞれの考え方を聞いた。(全3回の1回目/#2、#3を読む)
デジタル施策に熱心な鳥取県知事が「ChatGPTの使用は禁止したい」
まずは鳥取県。「答弁資料の作成だとか、予算の編成だとか、重要な政策決定では県庁の職員にChatGPTの使用は禁止したいと思います」。平井伸治知事がこう表明したのは4月20日の記者会見でだった。
4月9日の知事選で5期目の当選を果たして、新しい任期が始まったばかり。その最初の定例会見で自ら切し出したのだから、よほどの思いがあったのだろう。どんな気持ちだったのか。
「私はどちらかというと癒し系で、あまり強い言葉は使わないようにしています。でも、ちょっと今回は強めに申し上げざるを得ないかな、一石を投じなければいけないかなと思い、覚悟を決めて、あえて申し上げました。事前に職員に『こういうことを言うよ』と告げたら、皆さんびっくりしていました。インターネットやICT(通信技術を活用したコミュニケーション)、テクノロジーについて物を言えば、とかく『生意気だ』などと批判されやすいですから」
平井知事が初当選したのは2007年だ。デジタル施策には当初から熱心だった。
鳥取県の人口は53万9190人(2023年4月1日時点)と都道府県で最も少ない。職員数も少なく、「効率よく仕事をして、働き方改革も行いたいと考えてきました。だからAIを活用したオフィス・オートメーション化に取り組んできました」と平井知事は語る。
議会や会議の議事録の自動作成はもうかなり前から行っている。人間ドックで受診者が筆記した質問票はAIを使って読み取ることで、打ち直しにかかっていた時間を大幅に短縮できた。
「問い合わせにチャットボット、若手職員支援にスマートグラス」は導入しても
自動車税の問い合わせでは、県のホームページにチャットボット(自動会話プログラム)機能を設けた。県民の多様な質問をAIで判断し、県が準備した回答にマッチングさせるようにしたのだ。「勤務時間外も質問を受けられるので非常に評判がよく、6割ぐらいは勤務時間以外の問い合わせです」と知事は説明する。
今年度は本庁舎から離れた地区で勤務する若手職員を支援しようと、眼鏡のレンズに電子情報が表示できるスマートグラスの活用を試みる。グラスを掛けた若手職員と同じものを遠隔で見て、手慣れた先輩職員がアドバイスするのだ。