幼馴染の高須光聖によると、浜田の本来の気質はボケだという。それが松本のボケに対し、同じようにボケを乗せることは少しはできるものの、それ以上は表現できないので、笑いにバイオレンスを足して応戦することになったというのだ。高須は《俺が察するに、浜田には、あのボケと一緒のものを伝えるために、ありえへん暴力が必要だったのかなと》と分析する(『SWITCH』2012年12月号)。浜田の代名詞ともいうべき相手をはたくツッコミも、そもそもは松本に対抗するため生まれたものなのだろう。
大御所歌手をいきなり呼び捨てに
浜田のバイオレンスなキャラクターは、東京進出にあたり大きな武器となった。このとき彼が担ったのは、まず何よりダウンタウンの存在を認知させることだった。そのため、当時の人気番組『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』に出演したときも、大御所の加山雄三に向かっていきなり「こらあ、雄三!」と呼び捨てしたり、司会の逸見政孝からいじられると「じゃかあしいわ!! 逸見ィ、このボケがぁ!」と応酬したりと番組をかき回し、まさに“爪痕”を残す。
そこまでやったのも、黙っていたら誰もダウンタウンのことなど見向きもしないとの思いからだった。《まずボクが“ワーッ”いうて客がパッとこっちを見たときに、松本がその状況を見て“今や”というところで出てくる。そこで“ポロッ”とおもろいことをいう。すると客がボーンとウケる。このパターンに持ちこむためには、まずボクがムチャクチャせなあかんかったんです》と、浜田はのちに明かしている(濵田雅功『がんさく』幻冬舎よしもと文庫)。
浜田はその後、MCとしてもパンチを発揮する。いまも続く『ダウンタウンDX』の第1回(1993年)では、ゲスト出演した俳優・菅原文太に「文太さん、今でもオナニーしてますか」ととんでもないツッコミを入れてみせた。みんなが恐れるような大物にも容赦なくツッコむことで、テレビを見ている人に喜んでもらい、またその人の違う一面を引き出そうという狙いがあったという(『CREA』前掲号)。
「俺の頭をどつかせるのは浜ちゃんだけ」
大物たちの側も、そんな浜田の意図を汲み取ってか、彼のツッコミを受け入れていった。志村けんは「俺の頭をどつかせるのは浜ちゃんだけ」と言っていたらしい。和田アキ子が音楽番組で歌を失敗したときには、浜田から「おまえ何年やってんねん」とメールを送り、和田がすぐに電話をかけてきたので「見てたよ。おまえアホちゃうか?」と言ったという。それでも和田としては、浜田が茶化してくれたおかげで失敗が笑いに昇華されたと思ったらしく、彼のことが好きになったようだ(『Quick Japan』vol.104)。
近年、相方の松本はことあるごとに引退をほのめかしている。一方、浜田は、人気絶頂に達した90年代から、ダウンタウンがなくなったら自分はお笑いをやめるつもりだと公言してきた。では、仮にコンビが解散するとして最後に何をするのか? そう訊かれたときの彼の答えはいつも「漫才」一択であった。