2001年のインタビューでは、《一番最後は、[引用者注:松本と]二人で花月(劇場)で漫才しようと思ってるんです。大阪へ帰ろうと。「漫才師」って肩書つけられた時、「カッコ悪いやんけ」と言いながら、ちょっと嬉しいんですよ。だからどこまでも漫才師でいたいんでしょうね》と話していた(『週刊文春』2001年7月5日号)。
60歳を前に「元気なうちに辞めたい」
ダウンタウンの二人で漫才をする機会はこの時点ですでにほとんどなくなっていた。それが昨年4月、大阪・なんばグランド花月での吉本興業創業110周年特別公演「伝説の一日」で、じつに31年ぶりに漫才を披露する。30分にわたるそのステージで見せた昔と変わらぬ息ぴったりのやりとりは、“漫才師・ダウンタウン”の復活を実感させるに十分であった。
それにもかかわらず、浜田は60歳を前にしてのインタビューで、《おれは元気なうちに辞めたいねん》と、松本と歩調を合わせるような発言をしている(『SWITCH』2023年2月号)。さすがにいまのところは、辞めたいと言っても会社側に、いま辞められたら困ると引き留められているようだが、少なくともお笑いの仕事に関しては、《うちの相方がどう動くかによってどうするかやから》と話す。
唯一の心残りは…
それでも同じインタビューでは、個人での仕事で《一個だけ心残りは、ドラマでめちゃくちゃ悪い役やらしてもらわれへんかってん》とも口にした。思えば、浜田はドラマや映画にもたびたび出演し、性格俳優として存在感を示してきた。それが悪役をやっていないというのはちょっと意外である。
かつて浜田はバラエティ番組『ダウンタウンのごっつええ感じ』で、「シンデレラ」のパロディコントをYOUや篠原涼子らと演じた際、途中でスタッフから制止されるほどブチ切れるというドッキリを仕掛け、彼女たちを泣かせたことがあった。あのときの迫真の演技を思い起こすにつけ、浜田が本気を出せば、皆が震え上がるほどの悪役を演じることなどわけはなさそうだ。
他方で、切れさせたら怖いというイメージが強いためか、彼をいじることのできる人はいまだにほとんどいない。本人もそれについては自分のなかで損しているところだと認めている(『SWITCH』2012年12月号)。還暦を境に、若手からいじられることで新境地を拓く浜田雅功というのも、ちょっと見てみたいところではある。