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“名義を貸して”毎月10万円というのでOKしたら…「税務署に追われ、今は生活保護」ある40代男性の“後悔”

2023/05/18
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 それに、店で働いていた女のコやほかのキャストの情報もいっさい渡していません。メンズエステで働いていたことがバレたら、人生に響く人ばかりですから。この件は僕1人がすべてを背負って片をつけようという覚悟は、最初から決まってました」

会社は倒産、転職するも生活保護に

 だが当然、個人で4000万円もの大金を払えるわけもなかった。

「もう諦めて、法人を解散させて税金から逃れることに決めました。事前にこの業界で有名な税理士事務所の先生にも相談したのですが、何度も同じ手を繰り返さないならお目溢ししてもらえる可能性が高い、と言われたのもありまして……。

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 実際に代表にされていた2社を潰し、電話で素直に『もう無理です』といったら、あっさりと計4000万円の支払い義務は免れることになりました」

 だが、すべて綺麗にリセットされたわけではなかったという。吉田さんは風俗グループを2019年4月に離れ、同年9月には水商売全般の求人媒体の制作会社に転職したものの、都税が吉田さんの新たな住所まで突き止め、連絡してきたそうだ。

「ざっくりいうと、店の過去の売上げを都税が精査していたら行方不明の300万円が出てきて、それを僕がガメたんじゃないかって言いがかりをつけてきたんです。普通に利益としてオーナーに上げていて、手元になかっただけなんですが、それを僕に補填しろと言ってきまして。

 しかも、その内容は新しい転職先にまで伝えられてしまい、都税と会社の上層部が話し合う事態に……。結果、僕の当時の給料の手取り25万円から月8万円ずつ天引きされ、3年以上かけて都庁に返済していくというプランを提示されました」

吉田剛さん(仮名)(筆者提供)

 会社の上司から提示されたそんなプランに返事を渋っていると、同月のうちに都庁の職員は吉田さんの家にまで差し押さえにやってきたという。

「出勤しようとしていたときに、インターホンと電話が同時に鳴り出しました。僕は『出勤中なので』といったんですが、向こうはわざわざ鍵を開錠できる人まで呼んでいたようで、『入りますよ』と無理やり鍵を開けられ、たまたまテーブルに置いてあった現金8000円だけ徴収されました」

 そんな強硬手段を受け、吉田さんは当時働いていた会社をやめることを決意。その後は生活保護を受けながらドヤ街を転々とする生活を送っているそうだ。

「都税があそこまでしつこくなかったら、生活保護を受けるまでにはならなかったはずなんですよね。それでコロナ禍に入ってから、酔っ払った勢いで都税に『お前ら俺を生活保護にして、いま、どんな気持ちだよ』って電話しちゃったんですが、そしたら向こうは、『生活保護の人からは徴収できません』ってすんなり手を引いたんです。そんなの、もっと早く言えよって話ですよ」

 安易に無申告の店の代表を請け負った代償は、あまりに大きかった。

“名義を貸して”毎月10万円というのでOKしたら…「税務署に追われ、今は生活保護」ある40代男性の“後悔”

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