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《沢田研二を口説いたのは誰?》岸部一徳が明かした「ザ・タイガース」デビュー前夜の“ヴォーカル問題”

《沢田研二を口説いたのは誰?》岸部一徳が明かした「ザ・タイガース」デビュー前夜の“ヴォーカル問題”

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「僕のマリー」「モナリザの微笑」「君だけに愛を」など数々の名曲を残したザ・タイガース。ミュージシャンの近田春夫氏が、メンバーであった岸部一徳氏、森本タロー氏とザ・タイガースを語る鼎談「甦るグループサウンズ」を一部転載します。(月刊「文藝春秋」2023年6月号より。構成・下井草秀)

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 近田 タイガースは、どういういきさつを経て結成されたんですか。

 岸部 どうだったかなあ……。古希をとうに超えたこの歳になると、メンバーそれぞれの記憶がバラバラになってるんですよ。

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(左から)岸部氏、近田氏、森本氏 ©文藝春秋

 森本 肝腎の沢田研二をスカウトした時の状況すら一致しない。

 岸部 京都の河原町にあった「田園」というディスコのステージで、別のバンドのヴォーカルとして歌っていた沢田の出番が終わってから、僕とタロー(森本)が声をかけて立ち話をしたんじゃなかった?

 森本 いや。その後、近くの「凱旋門」という深夜喫茶に連れてきて、そこで説得したんじゃなかった?

 岸部 ほら、このぐらい記憶が食い違う(笑)。少なくとも、誰が口説いたのかに関しては、沢田本人の記憶が正しいと思うんだよ。

 近田 何て言ってたんですか。

 岸部 「(加橋)かつみは自分がスカウトしたと言ってるけど、僕は、サリー(岸部)とタローに声をかけられたという風に思ってる」って。

 近田 加橋さんは加橋さんでまた別のこと言ってるんですね(笑)。

 森本 まあ、沢田の言ったことが正解ってことにしておこうよ(笑)。

 近田春夫氏が上梓した『グループサウンズ』(文春新書)が、話題を呼んでいる。1966~70年の5年間、我が国の芸能界に狂い咲いた一大ムーブメントを振り返る本書で、大きくページを割いて取り上げられているのが、GSことグループサウンズの雄たるザ・タイガース。
 そのメンバーであった岸部氏、森本氏は、6月25日にさいたまスーパーアリーナで開催される沢田研二氏のコンサートに参加。久しぶりに、タイガースの一員として舞台に登場する。

近田春夫氏 ©文藝春秋

 近田 「田園」で沢田さんに出会う以前、すでにバンドとしての活動は始まっていたんですよね。

 森本 それまでは、インストゥルメンタルのバンドだったんですよ。

 近田 つまり、ベンチャーズみたいなエレキギター主体のバンドだったんですね。

 森本 ところが、イギリスから、ビートルズだとかローリング・ストーンズだとか、ヴォーカルを擁するバンドが出てきた。

 岸部 これからは歌わなきゃいけないんだなと思ったよね。

 森本 僕とサリー、加橋かつみと瞳みのるの4人の中には、歌う人間がいなかったから。