だが、一審判決を扱った多くのメディアは、掌を返したように一切触れず、全国紙も朝日新聞と毎日新聞が小さく報じたのみだった。テレビ局は言うに及ばず、広告業界も何事もなかったかのように、ジャニーズ事務所のタレントの起用を続けた。
結果、ジャニー氏は行為を改めることなく、プロデューサー業を生涯全うした。そしてジャニーズ事務所は、業界最大の売り上げを誇るプロダクションとして君臨し続けた。
英BBCが「ジャニー氏の性加害問題」を1時間番組で特集
それから約20年が経った今年3月7日午後9時。英国営放送「BBC Two」のゴールデンタイムで、約1時間の番組『Predator:The Secret Scandal of J‐Pop(プレデター~Jポップの秘密のスキャンダル)』が放送された。番組では被害を受けた元ジャニーズJr.の男性3名が顔を出して登場し、被害を語った。
2017年に「ニューヨーク・タイムズ」紙が報じた映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインの女優たちへの性加害問題をきっかけに、「#MeToo」運動が起こった。BBCも、日本メディアに黙殺されてきた性加害を、再び掘り起こしたのだった。
BBCの報道で衝撃的だったのが、高裁判決が確定した後も、ジャニー氏が性的虐待を続けてきたことだ。そこで小誌は改めてこの問題について取材を進め、これまで12人の元ジュニアが被害を告白している。そのうちの一人であるカウアン・オカモト氏(26)が4月12日、日本外国特派員協会で記者会見を開くと、国内外問わず多くのメディアが集まり、これまで沈黙してきた日本の大手メディアも続々と報じ始める事態となった。そして、5月10日発売の「週刊文春」では元ジュニアの橋田康氏(37)も新たに実名・顔出しで性被害を告白した。
さらに一部のジャニーズファンも動き出す。「PENLIGHT (ペンライト)ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」を立ち上げ、オンラインプラットフォームで署名活動を行った。同団体は5月11日、都内で記者会見を開き、事務所に検証などを求める署名約1万6000筆を郵送で提出したと発表。これに対してジャニーズは要望書に関しては「個別に回答することは差し控えさせていただきたい」とする一方で、メディアの取材に対し、「事務所の見解及び対応については、今週末公式にお伝えさせていただきます」と回答している。
ジュリー社長は動画で説明
こうした一連の動きを受けて、ジャニーズ事務所は今回、公式HPにジュリー社長が動画で謝罪の意を示し、「各方面から頂戴したご質問への回答」を掲載した(動画は記事最後で公開中)。
その中で、BBCの番組報道やカウアン氏の告発についてはこう述べている。