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「カタギになってもわしら5年間通帳もつくられへん」中には前歯が抜けた79歳のヤクザも…ヤクザの社会復帰を邪魔する「天下の悪法」の正体

『懲役ぶっちゃけ話』 #4

2023/05/21

genre : ライフ, 社会

 銀行口座もカード類もつくれない。クルマの購入など各種ローン契約や、保険の加入も不可能……ヤクザから足を洗っても、社会復帰できない日本の問題とは?

 元山口組系組長の竹垣悟(たけがき・さとる)氏の新刊『懲役ぶっちゃけ話 私が見た「塀の中」の極道たち』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

元山口組系組長の竹垣悟氏が語った「ヤクザの社会復帰を拒む法律」とは? (写真提供:竹垣悟)

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「このままやくざを続ける意味があるのか」

 バブル経済華やかりし昭和の時代、やくざは暴力を背景に不動産や金融業界で暗躍し、わが世の春を謳歌した。いいクルマに乗り、いい女を抱き、高級クラブで札ビラを切り、肩で風切って歩いた。

 (俺もいつかは出世頭に)

 そう思って男を磨いた。

 だが、バブル崩壊で表経済が長い平成不況のトンネルに入り、やくざはそれに加えて暴対法と暴排条例で、いまも締め上げられている。

 (このままやくざを続ける意味があるのか)

 懲役に行けば否応なくこれからの人生を考えてしまう。

 不良たちにとってやくざがあこがれの対象でなくなってきたいま、必然的にどの組も高齢化が進み、団塊の世代と呼ばれる70代の組員がたくさん現役でいる。

 2021年(令和4年)、こんなウェブ記事を目にした。

 散歩中にリードを離していた飼い犬のシェパードが通行中の男性に嚙みつき、ケガを負わせたとして特定危険指定暴力団・工藤會系組長が重過失傷害の疑いで逮捕された。

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