銀行口座もカード類もつくれない。クルマの購入など各種ローン契約や、保険の加入も不可能……ヤクザから足を洗っても、社会復帰できない日本の問題とは?
元山口組系組長の竹垣悟(たけがき・さとる)氏の新刊『懲役ぶっちゃけ話 私が見た「塀の中」の極道たち』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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「このままやくざを続ける意味があるのか」
バブル経済華やかりし昭和の時代、やくざは暴力を背景に不動産や金融業界で暗躍し、わが世の春を謳歌した。いいクルマに乗り、いい女を抱き、高級クラブで札ビラを切り、肩で風切って歩いた。
(俺もいつかは出世頭に)
そう思って男を磨いた。
だが、バブル崩壊で表経済が長い平成不況のトンネルに入り、やくざはそれに加えて暴対法と暴排条例で、いまも締め上げられている。
(このままやくざを続ける意味があるのか)
懲役に行けば否応なくこれからの人生を考えてしまう。
不良たちにとってやくざがあこがれの対象でなくなってきたいま、必然的にどの組も高齢化が進み、団塊の世代と呼ばれる70代の組員がたくさん現役でいる。
2021年(令和4年)、こんなウェブ記事を目にした。
散歩中にリードを離していた飼い犬のシェパードが通行中の男性に嚙みつき、ケガを負わせたとして特定危険指定暴力団・工藤會系組長が重過失傷害の疑いで逮捕された。