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異例の民放批判も…NHK「クローズアップ現代」がジャニー喜多川氏の“性加害”に斬り込んだ意味とは

異例の民放批判も…NHK「クローズアップ現代」がジャニー喜多川氏の“性加害”に斬り込んだ意味とは

2023/05/18

genre : ニュース, 社会

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 12歳の頃に性的に陵辱された記憶。二本樹さんは27年経った今も忘れられずに苦しんでいた。

「クロ現」の取材に対して6人が性被害を告白したという。

今も“元少年たち”を苦しめる「心の傷」のトラウマ

 番組にはもう一人、50代の“元少年”が登場する。BBCが制作したドキュメンタリーでも涙ながらに証言していた林さん(仮名)だ。仲間内では性被害は公然の秘密だったと話す。

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(NHK総合「クローズアップ現代」5月17日より)

(元ジャニーズJr.林さん・仮名)

「人とは違う自分になっちゃったんだなというのが一番。親にも相談できることじゃないですし、学校の友達とかにも言えないし、こういう被害をなくすためには一度大きな問題になったほうがいい」

 自分自身は被害にあわないで済んだものの、他の少年への行為を目撃したことで深い後悔の念を抱えながら生きているという人も証言した。性加害の「心の傷」は直接の加害者にとどまらないほど根が深い。

(NHK総合「クローズアップ現代」5月17日より)

(元ジャニーズJr.の男性・匿名)

「私の横で寝ていた仲間がゴソゴソと夜中何かをされている。『自分は無事でよかった』と今思うとひきょうな考え。今もそのときの状況は脳裏に焼き付いています。そのときの感情は忘れられない」

メディアの責任は? NHKが展開した異例の“民放批判”

 ジャニーズ事務所が週刊文春の記事を名誉毀損だと訴えた裁判でも、東京高裁はセクハラ行為について重要な部分は事実だと証明されたと認定して、上告が棄却された2004年に判決は確定した。NHKなどのメディアが大きく報じることはなかった。週刊文春側の代理人だった喜多村洋一弁護士は「報道すべきものを報道していない」「報道機関としての怠慢だ」と指摘した。

 通常、NHKは放送の中で他のメディアを批判したりすることには極めて慎重な組織だ。ましてや同じテレビ局を公然と番組内で批判することはほとんどない。公共放送として日本の報道を中心で支えているという強い自負からだろう。

 だが、そんなNHKが他のテレビ局を批判的に報道するという異例な一幕があった。芸能界とメディアについて20年取材しているジャーナリストの松谷創一郎さんが、スタジオにゲストとして登場して次のように発言したのだ。