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異例の民放批判も…NHK「クローズアップ現代」がジャニー喜多川氏の“性加害”に斬り込んだ意味とは

異例の民放批判も…NHK「クローズアップ現代」がジャニー喜多川氏の“性加害”に斬り込んだ意味とは

2023/05/18

genre : ニュース, 社会

 沈黙を守っていたテレビ番組が、ジャニーズ事務所の“性加害”に初めて本格的に斬り込んだ。NHKの「クローズアップ現代」(以下、「クロ現」)。日本の公共放送・NHKを代表する調査報道番組である。

(NHK総合「クローズアップ現代」5月17日より)

 つい1週間前までは週刊文春が報じても、英国の公共放送・BBCがドキュメンタリーを放送しても、完全に黙殺していた大手メディア。芸能界の“権力”でもあるジャニーズ事務所の問題は、メディアにとって触れてはならないタブーだった。それがテレビのニュースで少しずつ報じられるようになってきた。

ついにヤマが動いた!

 5月17日(水)、NHK「クロ現」で放送された「“誰も助けてくれなかった”告白・ジャニーズと性加害問題」。番組の冒頭では、今年3月のBBCの放送がきっかけで被害を訴える人たちが続出している事実に触れた桑子真帆キャスターは語った。

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(NHK総合「クローズアップ現代」5月17日より)

(桑子真帆キャスター)

「なぜこの問題を報じてこなかったのか。私たちの取材でもこうした声を複数いただきました。海外メディアによる報道がきっかけで波紋が広がっていること。私たちは重く受けとめています」

 自分たちが報じてこなかったことを素直に認め、もっと報じるべき問題だったと深く反省する姿勢を見せたのだ。

 被害者の一人であるカウアン・オカモトさんは、4月に記者会見した際、大手メディアが報じない不作為が被害拡大につながったことを示唆していた。

(NHK総合「クローズアップ現代」5月17日より)

(NHK「クロ現」ディレクターの質問)

「もし当時大手メディアが報じていたら(事務所に入る)ご自身の選択は変わった?」

(カウアン・オカモトさん)

「たぶん(入所は)なかったんじゃないかと思います」

 報じてこなかった自らの責任を率直に認めて「重く受けとめる」。桑子アナの言葉は、NHKの看板報道番組として斬り込んでいくという決意表明だった。ついに“ヤマが動いた”。「大手メディアの沈黙」が完全に崩れ、報道の流れが大きく変わったのだ。テレビ報道を研究する人間としてその意味を考えておきたい。

新たに登場した「顔出し実名」の“元少年”

 今年3月に英国のBBCがジャニー喜多川氏(2019年死亡)による性加害についてのドキュメンタリーを放送して以降、週刊文春を中心に被害者たちが声を上げている。

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