ジャニー喜多川氏の性加害問題をめぐり、5月14日(日)に藤島ジュリー景子社長が「おわび」動画とコメントを発表してから1週間。再び日曜日に事態が大きく動いた。
テレビ報道を分析している立場として、改めてここ最近の動きを振り返ってみたい。
「おわび」前に“被害者”証言を放送したテレビ番組はわずか2つ
テレビの報道番組が“被害者”の元少年たち(元ジャニーズJr.たち)に個別に証言を取材して放送したのは、前日までTBS「news23」とNHK「クローズアップ現代」の2つの番組だけだった。
5月11日(木)にTBS「news23」(以下、「23」)が元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさん(26歳。15歳で性被害)と橋田康さん(37歳。13歳で性被害)の証言を放送。主要なテレビ番組として、初めて元ジャニーズJr.の声を本格的に取材した。この放送では、小川彩佳キャスターがスタジオで以下のように「テレビの責任」に言及した。
(TBS「news23」5月11日・小川彩佳キャスター)
「取材に応じてくださったカウアンさんはジャニー氏の疑惑について、『当時からメディアが報じていたらジャニーズ事務所に行くことはなかった』とも話されていました。果たして報道機関がどれだけこうした被害を報じてきたのか。少なくとも私たちの番組はお伝えしてこなかったという現状があります」
その後、5月15日(月)には日本テレビの情報番組「DayDay.」でNHKを退職してフリーとして新番組を任された武田真一キャスターが「伝えてこなかった責任」を自省するコメントを口にした。
(日本テレビ「DayDay.」5月15日・武田真一キャスター)
「こうしたことが芸能界の中での出来事でニュースとして伝えるべきことなのかを突きつめて議論したり考えたりすることをしてきませんでした。ジャニーズ事務所の藤島社長が『自らも積極的に知ろうとしたり追及しなかったことについて責任があると考えている』としていますけれども、同じ責任を伝える側としても感じている」
この夜、TBS「23」はジャニーズ側が公表した「謝罪」に対するカウアンさんと橋田さんの2人の反応を改めて報道した。翌16日(火)には、2人は立憲民主党の要請で国会でのヒアリングで自分の体験について話し、法改正を求めたことが各社のニュースで放映された。
ここまでは、被害者の個別報道という点ではTBSが先行していたが、17日にNHK「クローズアップ現代」(以下、クロ現)が初めてジャニーズ事務所での“性加害”を特集。新たに実名・顔出しで証言する被害者を登場させた。元ジャニーズJr.の二本樹顕理さん(39歳。13歳で性被害)だ。二本樹さんは、今も時々起きるというフラッシュバックについて語り、26年経っても心の傷が癒えていない現状を明かしていた。