TBSの検証番組「報道特集」(10月7日放送)でも、旧ジャニーズ事務所の影響力の大きさを物語る出来事があった。
「国税絡みでジャニーズのことを調べていたら、事務所の関係者がどこかで調べたのか、私の携帯に電話をしてきたりみたいなことはされている」(当時の社会部記者)
TBSも日本テレビやフジテレビと同様に、自己検証の結果として明らかになった“不都合な真実”を明るみに出している。それはジャニー喜多川氏が起こした交通事故について、ニュース原稿を用意しながら、結果的には報道しなかったことだ。(全3回の3回目/#2から続く)
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ジャニー喜多川氏の追突事故
2012年10月に東京・港区の路上でジャニー喜多川氏が運転する乗用車が軽乗用車に追突する事故を起こし、相手の男性が首に1週間のケガをした。一部の新聞はこの事故を報道したが、TBSは事故の事実をつかんでいたのに報じなかった。記者は昼ニュースで放送する予定で原稿も用意された。ところが最終的にこのニュースは「欠番」として扱われ、報じられることはなかったと「報道特集」では取り上げた。
芸能事務所との窓口になる編成部の担当者が報道局を訪れ、報道局幹部と話していたのを複数の報道局員が見ていたという。
この件について報道局員に感想を聞くと、「納得できなかった。忖度そのものだと思った」と批判する。
当時の報道局幹部は「ニュースとして報じるかどうかは様々な要素を勘案して決めている。『ジャニーズ事務所は面倒くさい』という思いや事務所と日々向きあっている編成部への配慮がニュースとして報じるかどうかを判断する様々な要素のうちの一つになったのは間違いない」。背景としてこんなこともあったという。
「この頃、有名人が起こした軽微な事故を報道することが続いていて幹部間でそれに疑問の声があがっていた」
さらに今年3月にBBCがジャニー喜多川氏による性加害問題を扱ったドキュメンタリー番組を放送した後、TBSがこの問題を初めて報じたのは1カ月以上後の4月22日放送「news23」だった。元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏の会見を受けて、旧ジャニーズ事務所が「私たちは本件につき問題がなかったなどと考えているわけではございません」という文書を関係各所に送っていたことがわかるまで、報じなかった。