1ページ目から読む
4/4ページ目

「ジャニーズという巨大な帝国を育てたのはテレビ局です」

 ジャニーズとのつき合いは「数字を取る」。つまりは視聴率を取ることにつながる。それが社内でも自分の評価として返ってくる。

 この言葉ほど、テレビ局員の「本音」を語った言葉はないだろう。テレビ局と旧ジャニーズ事務所が「持ちつ持たれつ」の関係だったことがよくわかる。

「ジャニーズという巨大な帝国を育てたのは間違いなくテレビ局です」

ADVERTISEMENT

 報道人としての反省を込めて日下部正樹キャスターはそう言い切った。その意味は決して小さくはない。

看板が撤去された旧ジャニーズ事務所の本社ビル ©時事通信社

 在京局では、10月26日にテレビ東京が検証番組を放送している。10月27日時点で、これまで見てきたテレビ局と比べると、自己検証の動きがまだほとんど見られないのがテレビ朝日だ。看板の報道番組「報道ステーション」を抱え、「報道のテレビ朝日」というイメージを強く押し出している同局だが、会社をあげての検証に後ろ向きだったのだろうと筆者は考える。

 元忍者の志賀泰伸さんはテレビ朝日のプレハブ内のトイレでの性被害を証言したが、テレビ朝日はジャニー喜多川氏の性加害について検証する特別番組を制作し、放送する予定だとコメントしている。

 スポンサーも含めて、子どもへの人権侵害についてどう向きあってきたのかが問われているグローバル社会のメディアとして、さらには企業のリスク管理の観点からも、頬被りは許されないはずだ。

 ジャニーズ事務所から社名を変えて、被害者への補償などをどこまで進めていくのか問われている「SMILE-UP.」。同様に、取り引き先として自己検証する責任が各テレビ局にある。調べた結果が自社のイメージを低下させるような“不都合な真実”だったとしても公表する姿勢を見せることで、それが長い目で見たときにテレビメディアに対する信頼を回復していくはずだ。

 会社やグループの名前から「ジャニー」の表記が消えても、終わることなく新たな事実が出てくるジャニー喜多川氏による性加害の闇。うみをすべて出し切るには、「巨大な帝国を育てたテレビ局」が自ら検証を進めていくしかない。