「『ジャニーズは面倒だ』という感覚を持っている局員が大勢います」
ベテラン記者である日下部正樹キャスターはいつになく語気を強めてスタジオでこう語った。
「当時は私も報道局のデスクでしたから、己の不明を恥じるばかりなんですけれども、『当時は男性の性被害に対する意識が低かった』とあるんですけれども、それならばなぜその後も20年、放置されてきたのか。報道局、そして私たち『報道特集』も伝えるべきことを伝えてこなかった。これは一種の職務怠慢です。その結果、人権被害が広がった。このことを忘れてはならないと思います」
「ジャニー氏の交通事故をニュースで扱わなかった件ですけれども、報道局員は仕事でジャニーズ事務所の関係者と関わることはほとんどありません。それでも社内で見聞きした経験から、『ジャニーズは面倒だ』という感覚を持っている局員が私も含めて大勢います。ふだんからニュースにする・しないの判断はその出来事の重要性などを勘案して行っていますが、その判断をする要素の一つにジャニーズ事務所と向きあっている編成部への配慮などが入ることは問題で、さらに検証しなくてはいけないと思います」(村瀬健介キャスター)
「合宿所で何かあるんだなとは感じた」
「報道特集」は報道局の検証結果の後に、旧ジャニーズ事務所とのつき合いがより深いバラエティーやドラマなどの制作・編成の担当者たちに聞き取りした結果を公表した。番組はTBSの制作や編成の経験者約60人に直接取材を行った。
「ジャニー喜多川氏の性加害を知っていたか」などの質問には「文春の記事を読んだ記憶はあるが、芸能界のスキャンダルという認識でゴシップとして捉えていた」(元役員・制作経験者)などの回答が多く、「ジャニー氏が同性愛者で少年が好きという噂はあったが、性加害とは思わなかった」という認識の制作・編成経験者が多かったようだ。
他方でジャニー喜多川氏の性加害をうかがわせる一端に触れた社員もいた。
「ジャニーズ事務所のタレントと食事に行ったときに『合宿所をとにかく早く出たかった』と言っていたので、合宿所で何かあるんだなとは感じた」(制作担当者)