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「戦争から利益を得ることはしたくない」Oryx創設者が語るウクライナでの“OSINT最前線”《世界初インタビュー》

Oryx創設者シュテイン・ミッツァー氏インタビュー #1

2023/05/25

genre : ライフ, 社会, 国際

note

自由時間を利用し、「趣味」として運営

――ミッツァーさんが顔出しをされないのは、セキュリティ上の理由でしょうか?

ミッツァー セキュリティというより今後訪問する国で、こういう活動をしているのがよく思われずに入国拒否されてしまう可能性があるので、できる限り顔がわかるようなものは掲載しないようにしています。

――今後の調査活動のためですか。

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ミッツァー 私よりカンパニーに注目してもらいたいからです。平たく言うと、自分に焦点が当てられるのが嫌だというところがあります。

――カンパニーと言いましたが、Oryxは会社組織なんですか?

ミッツァー 登録されている会社ではありません。仲間内でそう呼んでいるだけです。

――Oryxは今何人体制でどう運営されているのですか?

ミッツァー Oryxは協力者はいても誰も雇っていません。趣味ということで、自分たちの自由時間を利用してやっています。これで生計を立てているわけではなくて、得た情報をもとに記事を出版社に出したりはしますけど、それ以外に本職があります。

 北朝鮮の軍事についての本(邦訳は『朝鮮民主主義人民共和国の陸海空軍』(大日本絵画))を出版しましたが赤字でした。自分一人でやっていたので、イラスト料とかも全部自分のポケットマネーから出して、制作にもかなり時間がかかってしまい、赤字になってしまいました。

ミッツァー氏の著書『朝鮮民主主義人民共和国の陸海空軍』(大日本絵画)

最初はただの暇つぶしのようなものだった

――Oryx最初の記事は北朝鮮の軍事情報でしたね。本来の専門は北朝鮮になるんでしょうか?

ミッツァー 焦点はその時その時で変わります。今は北朝鮮の軍事についての本の新版を作っていて、2023年の情報に更新したところです。それが終わって一段落したことで、またロシア・ウクライナ情勢に目を向けているところです。

――初期はシリアや中東情勢の記事も多かったですね。何故そちらの方面をやられたんでしょうか?

ミッツァー 自分がTwitterを始めた頃にシリアの紛争が始まり、ある人がそれについて書いたんです。それを読んでいたら、「自分でもできるんじゃないか」と感じて、書き始めました。最初はただの暇つぶしのようなものだったのが、今では自分の時間をだいぶ使ってしまう趣味になっています。情報提供していることによって、いろんな政府関係者から話を聞きたいとか、様々なオファーがありましたが、どれも無給でした(笑)。