そこに、高校の後輩の山村が「体調不良には原因がある」「複数の選手から精神的苦痛を受けた」と訴えたことが報じられている。
そこに「中込」の文字はない。
しかし、山村がクビになった背景には、なぜかしら中込の存在が見え隠れしていた。
「ドラ1クラッシャー」「阪神のジャイアン」「いじめっ子中込」
とんでもない異名がつけられ、そのイメージはもはや、定着してしまっている。
ツイッターもヤフーコメントもない当時でも、これだけ波及したのだ。これも、阪神という超人気球団の恐ろしさでもある。
そんなこと、違うわ。
そういった言い訳を、中込はその後、一言も発していない。
私には、それが不思議でならなかった。
山村は中込に対して「恨んだりとかは一切ない」と言い「むしろ感謝している」とまで言っているのだ。中谷だって、中込の店にまで会いに来ていた。
“イジめられた”はずの山村は感謝し、中谷はどうして中込の店に会いに来たのか
これは、どうも、何かが違っている。
「それはだから、いくら言い訳したって、思う人は思うしね。別にそんな言い訳をする必要もないしね。まあ、でも、ある程度僕もやんちゃで、こう、なんだろ? ちょっと蹴飛ばしたり、そんなのするタイプだったから、まあまあ、それは『ジャイアン』でいいんじゃない、って感じやったわ、わはははははー」
漫画『ドラえもん』のキャラクター「ジャイアン」は、のび太に理不尽な要求をし、からかい、突っかかって来たのび太を返り討ちにしてしまう。
いじめっ子のジャイアン。だから中込は、阪神の「ジャイアン」と呼ばれた。
決して、誉め言葉ではない。それでも中込は、このインタビュー中、自らを何度も「ジャイアン」だと言って、豪快に笑った。
そして、あの一件を、いや二件の真相を、包み隠さずに明かしてくれた。
その前に、中込の野球人生を振り返っておきたい。彼の歩んできたキャリアの中に、中込という人間の“心意気”が見えるからだ。