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《今年から3連覇や!》岡田彰布はなぜ阪神タイガースを“再生”できたのか…藪恵壹、藤田太陽、中込伸ら阪神OBの証言で辿る“優勝の真実”

『阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや?』より #5

2023/09/14
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「阪神は強くなりますよ」「23年は優勝します」。今シーズン前、タイガースの躍進を確信する男たちがいた。藪恵壹、藤田太陽、中込伸らかつて阪神タイガースを支えたOBたちである。なぜ彼らは18年ぶりの歓喜を予想できたのか。

 阪神タイガースと、岡田監督時代のオリックスバファローズでも番記者を務めた喜瀬 雅則氏の『阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや』(光文社)より一部抜粋。元選手たちの証言と共に、優勝へと導いた岡田監督の手腕に迫る。(全2回の2回目/前編を読む)

©文藝春秋

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オリックス監督を務めて変わった岡田彰布

 オリックス監督時代の3年間を、私は番記者として見続けてきた。岡田の野球観は鋭く、さらに独特の“岡田語”のロジックは、その二手先、三手先の結論が先に来るものでもある。プロセスの詳しい説明が省かれるケースがほとんどなのだ。

 岡田は、それを「プロやん。察さなアカン」という。

 しかし、当時のオリックスの選手たちには、悲しいかな、それを読み切る力がまだなかった。勝ち方を知らない弱いチームでは“岡田の意図”を瞬時に理解できないのだ。

 2004~2008年の阪神・第1次岡田政権当時は、金本知憲、下柳剛、藤川球児、新井貴浩、桧山進次郎ら経験豊富で、実力も実績も兼ね備えた主力たちが、それこそ全盛期の時代だった。岡田が「1」を言えば「10」分かってしまうような選手ばかりだ。

 大きな指針を示せば、選手たちは目的地に向かって、それぞれのやり方で、きっちりと定められた時間にたどり着くことができたのだ。

 その“成熟した阪神”と“未熟なオリックス”とのギャップは大きかった。

 阪神時代のスタンスだった岡田に、次第についていけなくなったオリックスの選手たちとの溝が、年々深まってしまっていたことを、番記者の一人としてひしひしと感じていた。

昨年の秋季キャンプで見せた岡田彰布の変貌

 阪神監督復帰が決まった直後の2022年秋季キャンプ。

 岡田は足繁く選手のもとへ足を運び、直接アドバイスを送り、自らスイングをして見せたり、守ってみたりと、実際に動きまで見せ、実に懇切丁寧な指導をしていた。

 時代の流れ、選手の気質、育ってきた環境。そうした変化を踏まえたのだろう。岡田は間違いなく、かつての“アプローチ”を変えている。

 そして、就任会見でも、新人選手の入団発表でも、岡田は「アレ」と言い続けている。笑いのオブラートで包みながら、進むべき方向を指し示しているのだ。