阪神タイガースでくすぶり続けた藤浪晋太郎が、なかなか移籍をさせてもらえなかった理由とは――。

 ここでは喜瀬雅則氏の新刊『阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや?』より一部抜粋。阪神タイガースという日本球界屈指の人気球団が抱える苦悩に迫る。(全3回の3回目/#1#2を読む)

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藤浪はなぜ移籍までの道のりが長かったのか

 この“停滞する藤浪”への特効薬は「移籍」しかないとささやかれ始めた。過去のドラフト1位の先輩たちを見ても、その成功例が顕著に表れている。

 野田浩司は、オリックスに移籍した1993年に最多勝に輝いた。藤田太陽も、2009年シーズン途中に移籍すると、すぐに西武のセットアッパーとしてフル回転している。

 選手の野球人生を踏まえ、新たな活躍の場へ、大いなる心で送り出してやる。

 2022年オフから「現役ドラフト」がスタートしたのも、ファームでくすぶっている選手に、新たな環境で、新たな可能性を見出していければ、という大局観に立ったものだ。

 しかし、阪神のような超人気球団では、簡単に「はい、そうですか」とは言えない。

 仮に藤浪を放出して移籍先で復活を遂げ、ましてや阪神相手に勝つようなことが起こってしまえば、球団へのバッシングはもはや避けられない。

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 なんで出したんや、見る目がない。なんであんなに生き生きと活躍してるんや?

 ヨソで復活でもされようものなら、それこそ球団は赤っ恥なのだ。

 だから、球団は移籍させない──。

 その推察の連鎖も、阪神における“あるある”の現象であり、その一方で、このままの状態では“飼い殺し”の批判が出るのも避けられない状況でもあった。

 だから、少々嫌味を交えて言うのだが、藤浪の「メジャー挑戦」は、究極の解決策なのかもしれない。

 なぜなら、まず復活した藤浪に阪神が返り討ちに遭うことがない。