そうした岡田の一連の言動は、かつてのドラフト1位たちの心にも響いている。
彼らはそれこそ、異口同音に「阪神は強くなる」と力説するのだ。
「岡田さんが監督になって、ちょっと阪神は変わるでしょうね。岡田さんって、僕、実はすごく好きで、めちゃくちゃ野球に関して気難しいところはあるんですけど、選手を見る目はピカ一です。ちょっと楽しみにしたいな、と思っているんです」
そう語る藤田太陽は、岡田が指揮を執った2004年からの5年間で、わずか2勝しか挙げられず、うち3シーズンは未勝利だった。
西武へ移籍したのは、岡田が退任した翌年、2009年途中のことだった。
岡田政権下で、決していい思いをしたわけではない。それこそ第5章で記したように、6人の先発投手に、勝ちパターンでの「JFK」、負けているパターンでの「SHE」と、リリーフでも強固な6人が揃っていて、藤田の入る余地はなかった。それでも「僕は好きな監督の一人なんです」と藤田は言うのだ。
中込伸は、晩年の岡田彰布と一緒にプレーしたことのある一人だ。
矢野燿大、金本知憲になくて岡田彰布が持っている資質
「岡田さんって情はあるけど、勝負って言ったら、パチッと切り替えることができるでしょ? だから、阪神は強くなると思うんだよ。矢野(燿大前監督)さんとか金本(知憲元監督)さんって、やっぱり情があるよね。一緒にやってた連中をまた使って、蘇らせてやろうとか、一生懸命やってる2軍の選手を持ち上げてやろうとか、そういうのがある。岡田さんはオリックスにも行って監督もやっているし、勝負に対してはすごいからね」
その“情に流されない”というシビアな部分を、中込はひしひしと感じるのだという。藪恵壹は「岡田さんがやるから、2023年は優勝します」とまで断言する。
「だって、戦力はありますから。野手も軸になるのがいるし、今から佐藤輝明が脂、乗ってきますからね。2022年だって、開幕9連敗から6月、7月であれだけチームが上がって来たのは、大山(悠輔)のお陰でもありますからね」
2023年シーズンは、大山が7年目の28歳、佐藤輝は3年目の24歳。さらなる経験を積みながら、年齢的にもまだまだ力がついていく時期なのだ。この2人を中心に据えたチーム作りを、岡田は着々と進めている。
そして藪は、大阪万博が開催される2025年にも注目している。