「阪神、20年周期なんですよ。1985年、2005年、そして2025年です。2025年は、絶対にいい年ですよ。万博で関西が盛り上がります。だから、タイガースも盛り上げて、絶対に勝たないとアカン。右の森木(大智・高知/高知高/21年1位)と西純矢に、左の及川(雅貴・千葉/横浜高/19年3位)、このあたりの若いピッチャーが中心になって、2025年に阪神優勝。もう先駆けて、本、書いたらどうですか?」
そんな提案までいただきました。
岡田彰布と原辰徳。大学時代から因縁のあるふたりの大スター
岡田が指揮を続けていれば3年目。年齢的にも集大成だろう。あるいは、岡田からバトンを受けた次期監督が“新生・阪神”を引っ張っているかもしれない。
そうしたビジョンを球団が描き、選手をその気にさせ、関西全体の機運も盛り上げる。1935年創立の球団にとって「2025年」は90年の節目にもあたるのだ。
岡田が「アレ」と言い続けていくことは、そうしたムードも醸成されていく力がある。
2010年、岡田がオリックスで監督をしていた当時、巨人の監督は原辰徳だった。
干支も一回りした2023年、いまだ監督の座についているのは岡田と原だけだ。2人の“共通点”は多い。
早大の岡田、その1年後輩となる東海大の原は、日米大学野球の日本代表チームで、一緒にクリーンアップを打った間柄でもある。
そして、岡田は阪神、原は巨人へ。
伝統と人気を誇る注目度の高い球団で、2人はスター選手としてその看板を背負い続け、ともに選手としても、監督としても「優勝」を経験している。
この本でテーマとして挙げた「看板」「風土」「育成」「戦略」「誤解」「派閥」。そうした一つ一つの要素が複雑に絡み合う老舗の球団で、岡田や原のように長く、その個性を発揮し続けることは、そうした機微に通じた者にしかできないのだろう。
一種、独特ともいえる味わいを帯びた阪神を「ソフト」として、大阪、さらには関西という環境を「ハード」として捉えれば、その相関関係が見えやすい。
ハードに適合しなければ、ソフトは全く作動しない。関西だからこそ、阪神が生き続ける。大阪というハードに、巨人というソフトを組み込んだところで、きっと動かないだろう。
時代とともに、関西の街も、阪神の野球も進化を遂げていく。