本橋 カーリングのスキルは当然なんですけれど、前段階の準備から手を抜かない。選手とコーチ、スタッフの全員が同じ方向を見て大会に臨むことができていますよね。連戦で疲れもあったと思うのですが、耐えられる器ができた。またはその器が大きくなったな、と感じました。世界一が手に届く場所にいるチームとの収穫の多い試合になりました。
自分たちらしいスタイルを貫くのは大変ということを体感
――その6年の間に2つの五輪と2色のメダル、グランドスラム初制覇や日本選手権連覇など、ロコ・ソラーレは走り続けています。彼女たちの変化のようなものはありますか?
本橋 世界で戦うための根本や原点は変わらないような気がします。みんな勝っている時より負けている期間のほうが長くて、そして負けている時にチームのために何ができるかと考えてひとりひとりが動いていた。その結果が成績になっていったんですけれど、でもそれって簡単なことじゃなかったんだと、自分でまたチームを作って一緒に成長していく中で改めて感じました。
――ロコ・ステラとしては日本選手権初出場でした。
本橋 1回目の日本選手権で(雰囲気に)呑まれたところは、しっかり呑まれてしまった。自分たちらしいスタイルを貫くのは大変、ということを体感できた大会でした。悔しさの種類もいろいろあると思うんです。単純に勝てなかった悔しさ、自分たちらしくプレーできなかった悔しさ、プレーしたくても出られなかった悔しさ。それを得て、今後に活かしていくために本当にいい経験ができました。
ギャップの差をうまく融合させてエネルギーを生み出す
――佐々木穂香選手が加入して、チームがまたひとつ動きました。
本橋 それこそ穂香がずっと持っていた悔しい気持ちはチームに必要なものでした。ステラってお姉さんたちのおかげで、比較的、最初からカーリングに集中できる環境にいるので恵まれていると思うんです。でも、その中でどこまでカーリングに向き合えるかは大事なポイントです。
――本橋さんが青森でトリノやバンクーバーなどの五輪を戦っていた時代から比べると、企業チームやスポンサーも増えて、確かに環境は整備されつつあります。
本橋 そうなんです。でもだからといって今の子たちが戦う姿勢がとれてないというわけでは一切なくて。時代が変わっていけば、スタートのベースが違うのは当然のこと。生まれた時からタブレット端末がある世代と、私たちの世代とは情報の集め方や活用の仕方が異なっていることを嘆いても仕方ないように、そのギャップを突くのではなく、うまく融合させたり、時には反発してもいいのですけれど、そこからうまくエネルギーを生み出さなければならないと考えています。