現在は2児の母となった本橋麻里が、6年ぶりにカーリング日本選手権に戻ってきた。トップレベルの舞台でママアスリートとして何を考え、何を思ったのだろうか。また、北海道カーリング協会の広報室委員としては、2023/2024の新シーズンから始まる「北海道ツアー」の立ち上げにも携わった。
プレーヤーとしての心境の変化や北海道ツアー立ち上げ秘話、さらにはカーリング界の未来まで話をうかがった。
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アスリートの普通は世の中の普通ではありませんが…
――2月の日本選手権終了後、本橋さんは「ママアスリートが増えて嬉しかった」とコメントしていました。
本橋 小穴桃里選手が産後2~3ヶ月でアイスに戻ってきてくれて、単純にすごいなと思いましたし心強かったです。桃里ちゃんが今回、出場していたチームの東京都協会のフォースの鈴木結海選手もママ選手なんですよね。大会中だったので少ししか話せなかったのですが、妊娠から出産、育児。そしてそれとカーリングを並行して続ける苦労は、子育ての環境は違うかもしれないけれど、みんなあると思うんです。
アスリートの普通は世の中の普通ではありませんが、それを細かく話さなくてもある程度、共有できているので「お互い大変だけど、頑張ろうね」という本当に短い言葉でも一言で完結するというか、お互い伝え合えることができた気がします。
子供の存在に支えられてカーリングに向き合えている部分もある
――本橋選手自身、2児の母となっています。ご自身の変化はどうですか?
本橋 若い頃は家族や夫、チームメイトに対してもそうかもしれませんが、相手に対して「どうしてわかってくれないの」とか「こういう所は変わってほしい」と求めていた気がします。でも母になって子供と一緒にいると、アクシデントやトラブルだらけ。本当に一瞬、目を離した隙に「あれ!? 泣いてる転んでる血が出てる!」って。パニックにはなることもあるんですけれど、「なんでこうなっちゃった」より「さて、この状況をどうやって改善しようか」と切り替えたほうが全員のためになるんですよね。そのあたりの「相手を変えるのは難しい。だったら自分が変わるしかない」という思考の転換はカーリングにも活きているかもしれません。
――育児によってアイスに乗る時間の確保だったり、家族の協力が必要になります。ある意味ではビハインドを背負うわけですが、そのあたりは?
本橋 うーん、まず子どもがいること自体がビハインドになっちゃうっていうのは、考え方としては健全ではないですよね。
――そうですね、失礼しました。
本橋 もちろん苦労はあります。でも好きでカーリングやらせてもらっているわけですし、ビハインドやデメリットがあるとしたら、それをいかにリワードに変えるか。そればかり考えています。例えば、試合で負けて落ち込んで帰っても、息子が玄関まで「おかえりなさいー」と迎えてくれるだけで、私の場合は「明日も頑張ろう」と一瞬でメンタルが回復します。それは私にとって最高のリワード。彼らの存在に支えられてカーリングに向き合えている部分も今はあるかもしれません。