ーー平日は鍼灸師として働きながら休日はブラインドスケーターとして活動しているんですよね。
大内 埼玉に来てから、SNSなどを中心にブラインドスケーターとして注目され始めて。スポンサーなんかもついたりしました。昨年の5月には、「1分間で目隠しをしてスケートボードでオーリー(前輪を先に浮かせてジャンプする基本のトリック)を行った回数」と「目隠しをしてスケートボードでオーリーを行った連続回数」の2種目でギネス世界記録を樹立しました。
最近は音楽活動も始めています。平日は仕事しながら、趣味のスケボーや音楽を仕事としてできている今の環境は本当にありがたいですね。
それに仕事先には何度も遅刻してしまって怒られるとか、当たり前の経験もしていますね。仕事終わりに友達と恵比寿や新宿まで飲みに行くこともあります。
視覚障がいがあるだけで「すごく頑張っていて偉いな」って思われる
僕はただ普通に生きているだけなのに、視覚障がいがあるだけで「すごく頑張っていて偉いな」って思われるんです。みんなと同じように生きているつもりだし、サボることもあるし、会社に遅刻することもある。むしろ適当な部分も多いんですよ。だからそう思われるのは心外なんです。
ーー「大内龍成」ではなく、「障がい者」として見られてしまうと。
大内 そうなんです。何するにしても「障がい者なのにすごいね」とか「障がい者なのにこんなに強いんだ」って思われてしまう。
最近みんなから「すごいですねポジティブで」とか「どうやったらそんなにポジティブになれるんですか」って聞かれるんですけど、ポジティブなんじゃなくてネガティブを潰しているだけなんですよ。嫌なことは嫌じゃないですか。俺はただ嫌なことを嫌って言ってるだけなんですよ。でも嫌なことを嫌って言うには責任を取らなければいけない。それだけなんですよね。
正直な話、みんなの前では明るくしていますけど、意外とメンタルは弱いんです。夜1人で部屋にいるときは泣いたりしますし。この前なんか「俺って1人で電車にも乗れないんだな」って自分が情けなく感じて。頭では理解しているつもりでも、ふとした時にすごく不安を感じてしまうんです。でもそんな時は酒を飲んで忘れますね。考えてもしょうがないやって。
何よりも辛いのは、選択肢を与えられないこと
ーー視覚障がい者ということで周りから言われて嫌だったことってありますか。
大内 たくさんありますよ。例えばよく議論になるのは、道で困っている障がい者がいた時になんて声をかけるかなんですけど、みんなよく「どこに行きたいですか? 連れて行きますよ」って言ってくれるんです。
それはありがたいんですけど、僕たちも人間なので決定権を与えてくれたら嬉しいなと思いますね。「どうしましたか? 助けましょうか?」って言ってもらえれば、「お願いします」とか、「いえ、大丈夫です」とか選択することができる。何よりも辛いのは、困っている可哀想な人と決めつけられて選択肢を与えられないことなんですよ。