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「隼人さんは2015年に猿之助さん演出のスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』で、サンジとイナズマという重要な役に抜擢されました。当時『ワンピース』は人気漫画を原作に持つ新作ということで不安視もされていたのですが、隼人さんは最も盛り上がる激しい立廻りのシーンを華麗にこなして興行の成功に大きく貢献したんです。その後の新春浅草歌舞伎の古典作品ではキザな役もかっこよく演じていて、さすがは映画スター・萬屋錦之介の系譜だと感じました。

 見ての通り今風の好青年ですし、舞台では立っているだけで決まる、とにかく“絵になる”役者です。近年の若手は個性が強く多士済々な役者が揃う中、隼人さんの演技は高いレベルで基本に忠実で、清涼剤のような存在感を放っています。稽古着の浴衣の着こなしも綺麗で、オフでも美しいんですよ」

新作歌舞伎「NARUTO」では主演の1人としてうちはサスケ役を演じた 本人インスタグラムより

猿之助からの「ひと皮むけてほしい」という期待

 その後も2018年初演の新作歌舞伎「NARUTO」でサスケ役での坂東巳之助とのW主演、2019年からのスーパー歌舞伎Ⅱ「新版オグリ」では猿之助との交互主演を任されるなど、猿之助が演出する作品に欠かせない存在となっていた隼人。今回の「市川猿之助奮闘歌舞伎公演」で千秋楽の主演に選ばれていたところにも、猿之助の意図が感じられると九龍さんは話す。

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「千秋楽で自分の役を若手に演じさせて注目度を上げる猿之助さんの計らいは、これまでにも何度かあったものです。夜の部の演目での『早変わり』は澤瀉屋のお家芸とも呼べる演出ですが、それを門外である隼人さんに任せられるのは、これまでの活躍ぶりがあってこそ。その一方で隼人さんは話口調もソフトで、自分が自分がというよりも、作品全体のクオリティを上げるためにどう自分が貢献できるかを考えているタイプです。そんな彼がこの千秋楽での代役を通じてひと皮むけてくれたら、という猿之助さんからの期待と気配りを感じます」

「巌流島」で横浜流星(左)と共演したことも 本人インスタグラムより

 隼人は今年2月から3月にかけて、横浜流星が宮本武蔵役で主演した舞台「巌流島」に佐々木小次郎役で出演。歌舞伎で磨いてきた殺陣で歴史に残る剣豪の対決を魅せたほか、近年はテレビドラマなど映像作品への出演も増やしていた。