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分刻みでメッセージを交換するように

 ポールは翻訳アプリを使い、最初から日本語でメッセージを送ってきた。 

 まずはお互いの自己紹介から始まる。ポールの出身国というフランスの話題になり、「フランスに戻って両親と一緒に住みたい。美穂は親のそばにいたくないの?」と尋ねられた。すると美穂は、幼少期に父親からDVを受けた過去を早々と打ち明ける。女子校を1年で辞め、定時制の高校へ移った。家出をしてアパートで1人暮らしを始め、喫茶店などのバイトをいくつも掛け持ちしながら卒業した。その間に出会った先輩と24歳の時に結婚し、長女と長男の子供2人を授かる。しかし、夫は「プー太郎」で、美穂が長距離トラックの運転手をしながら夫と子供2人を養った。夫との関係は冷める一方で、結婚から8年後に離婚。その後は、柔道整復師の国家資格を取得し、マッサージ店を開業する。加えてカフェなども経営する会社社長として馬車馬のように働いた。 

 そんな経緯を説明するうちに、いつの間にかポールが心を寄せてくれた。朝の「おはよう」に始まり、その日の食事メニューを含めて日常生活における些細な出来事を伝え合い、分刻みでメッセージを交換した。 

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投資業界に興味を示すと、ポールが即座に食いつく

 LINEでやり取りを始めて早くも3日目、ポールからいきなり、お金に関する話が飛び出した。美穂が「ポールは今から何をするの?」と何気なく尋ねた時のことだ。 

「ポールは今、外国為替取引をしています。コロナで各国の経済は影響を受けました。しかし株や電子マネーなどの投資業界は上昇傾向にあります。ポールの目に狂いはないよ」 

 これに美穂が軽く便乗した。 

「私も勉強したらできる?」 

 即座に食いつくポール。 

「もちろんできますよ。とてもよい勉強の機会だと思います。美穂が暗号資産の口座申請をするのを手伝うことができる。美穂はポールと一緒に勉強することができます。ポールが今やっていることは美穂の大きな助けになると思っています。美穂は新しい分野に飛び込む心の準備ができていますか?」 

 話を強引に進めようとするポールに美穂は警戒心を示すが、ポールは引き下がらない。 

「勉強時間は30分ぐらいですよ。私たちは一緒によい未来を歩みたい。美穂は恋人でありパートナーでもあります」 

 美穂はまだ不安を感じていたため、一度、電話で話をしたいと伝えた。すると間もなくポールからLINE電話が掛かってきた。美穂が回想する。