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〈詐欺犯を直撃〉高校生の頃から「国際ロマンス詐欺」に手を染めていた男性(20)が明かす“衝撃的な手口”と“驚きの言い訳”

〈詐欺犯を直撃〉高校生の頃から「国際ロマンス詐欺」に手を染めていた男性(20)が明かす“衝撃的な手口”と“驚きの言い訳”

『ルポ 国際ロマンス詐欺』より #2

2023/06/03

genre : ライフ, 社会

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 マッチングアプリやSNSなどを通じて金をだまし取る「国際ロマンス詐欺」について取材を行ったノンフィクションライターの水谷竹秀氏によると、詐欺犯は、西アフリカを中心として世界中に広がっている実態があるという。

 そんな彼らの実情を取材すべく、水谷氏はナイジェリアに飛び、詐欺犯を直撃した。ここでは、そうした稀有なルポルタージュをまとめた『ルポ 国際ロマンス詐欺』(小学館)の一部を抜粋。現地で見えてきた犯人たちの驚きの倫理観について紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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ポルノ女優とインフルエンサー 

 薄暗い部屋に、セミダブルのベッドが2つ並んでいる。広さは8畳ぐらいだろうか。そのほかには木製のシューズラックと1ドア冷蔵庫が置かれただけの、実に質素なアパートの一室だ。テレビもエアコンもない。隣の部屋は狭い台所で、そのすぐ隣がトイレ。水道が通っていないため、外の井戸から水を汲んでこなければならない。 

詐欺犯の姿 写真提供=水谷竹秀

 ここはラゴス郊外にあるスラムの一角である。周辺には木やトタン屋根でできた小さな家や雑貨店が軒を連ね、舗装されていない砂道はガタガタだ。強い日差しの中、女の子たちは外で縄跳びを楽しみ、男児は水の入ったバケツを頭の上に載せ、バランスをとりながら器用に歩いている。私がフィリピンで何度も目にしたスラムと同じような光景が、そこには広がっていた。 

 欧米人や日本人たちから大金を巻き上げた、彼らの派手な生活ぶりを想像していただけに、その薄汚れたアパートが目の前に現れた途端、彼らの置かれた現実が垣間見えたような気がした。「学生だから」という事情もあるのだろうが、一般的な彼らの生活スタイルは、意外にも厳しいのかもしれない。

サイバー犯罪に手を染めたきっかけ

 気温が30度を超す中、停電が続いて扇風機も止まっているため、部屋の中は蒸し風呂状態だ。メモを取るノートに汗が滴り落ちる中で、取材は始まった。 

「高校生の頃、友達の影響でデイティング(「デートをする」の意で、国際ロマンス詐欺のこと)をやり始めたんだ。フェイスブックの偽アカウントの作り方や、相手にする外国人の探し方を一通り教えてもらい、あとは自分でスマホを使ってやっています」 

 まだ弱冠20歳のレオン(仮名)が、サイバー犯罪に手を染めたきっかけを語り始めた。彼もアダム教授の紹介で、研究室での慌ただしい取材の後日に尋ねたのだ。訛りの強い「ピジン・イングリッシュ」と呼ばれる英語を話し、耳が慣れていない私は何度も聞き返しながら取材した。 

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