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あまりにも苦痛すぎた「スマホなしに24時間ベッド生活」

 足がないことの次に気がついたのが、

「あ、スマホがない!」

 実は、足がないことよりスマホがないことに絶望した!

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「噓でしょ?」って驚かれるけれど、本当だからしょうがない。

 だって、16歳だった。

 スマホ中毒じゃないけど、友だちや彼氏に連絡がとれないのが一番致命的。

 出かけるのが大好きだから、「スマホなしに24時間ベッド生活」というのは、あまりにも苦痛すぎた。

 バキバキになって、電源も入らなくなってしまった私のスマホ……。

「ねえ、新しいスマホ買って。お願いだから買ってきて」

 親が病院に来るたび、しつこくねだった。

 足について落ち込んで嘆くこともなく、ひたすら「スマホが欲しい!!!」と言い続けたので、さすがに母も呆れていた。

 今思うと、両親、特に母のほうが、事故のことを受け入れられていなかった。

 スマホを与えて友だちにどう話すのか、SNSでへんな書き込みをしないか、不安だったんだと思う。

スマホを操作する葦原海さん(『私はないものを数えない。』より/撮影=Sumiyo IDA)

「やりたいこと」をやるために

 スマホが与えられない私は、次の欲しいものについて要求を開始。

「いつ車椅子に乗れますか? いつ外出できますか?」

 病院の先生に毎日聞いた。

 自分が今思い返してもびっくりするけど、歩けなくなることへの不安や、足がなくてイヤだという気持ちが、いっさいなかった。

 足がないことはもう変えられないけど、私は猛烈に外に出たい。

 友だちと会いたい。

 学校に行きたい。

 ディズニーに行きたい。

 スタバのキャラメルフラペチーノが飲みたい。

 それにはどうしたらいいの?

 私は、「できないこと」じゃなく「やりたいこと」だけ考えていた。

 どうやったら、それがやれるかを。

 足がなくてもやれる方法があるなら、やりたい。

 泣いてる暇はないし、待ちきれない。