人と比べないから自分の道を進める
「いつ、退院できますか?」
両足を切断したことを、私のベッドの周囲に家族みんなが集められて、医師の先生からきちんと説明されたときの、私の最初の言葉がこれだった。
母親は今でも、この瞬間の私の第一声に、とても驚いたと言う。
私はとにかく早く、外に出たかった。楽しいことがしたい。友だちと遊びたい。
私がやりたいことをやる方法はたった1つ、「車椅子に乗って退院する」ことだけ。それなら早く実現したい。
私は先生にとにかく早く退院できるようにお願いした。そのための努力はなんでもできる。
YouTubeやTikTokでこの話をしたら、反響がすごかった。
「私だったらそんなに強くなれない。明るくできない」そうよく言われる。
たぶんそういう人たちは、「SNSで楽しそうに発信している車椅子ユーザーでモデルの葦原海」と、想像の中の「両足をなくした自分」を比べて、無理だと感じるんだろう。
でも16歳の私は、障がい者にも両足をなくした人にも会ったことがなかった。身近にいない、ネット上で見る機会もない、だから比べる相手もいない。
自分中心にしか考えていなかったから、シンプルに受け入れたんだと思う。
好きなように選んで、好きなように楽しむ
「両足を失って、変わったことはなんですか?」
よく聞かれるけど、あんまりない。
もともと明るかったから、急に明るくなったわけじゃない。
健常者とは違う立ち位置、ちょっと変わった状況にはなったけれど、足があってもなくても、私は生まれつき「変わった子」だった。
我が道を行く系、というか?
だからって「障がいは個性です」というのは、なんか違うと思うけど。
自分1人でできる範囲は狭まったし、できなくなったこともある。
でも、友だち、仕事仲間、親、まわりの人にお願いすれば解決できちゃうことがほとんど。
「あれもこれも、できなくなった」という感覚はない。
車椅子ユーザーになって、むしろ生きやすくなった。