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人と比べないから自分の道を進める

「いつ、退院できますか?」 

 両足を切断したことを、私のベッドの周囲に家族みんなが集められて、医師の先生からきちんと説明されたときの、私の最初の言葉がこれだった。

 母親は今でも、この瞬間の私の第一声に、とても驚いたと言う。

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 私はとにかく早く、外に出たかった。楽しいことがしたい。友だちと遊びたい。

 私がやりたいことをやる方法はたった1つ、「車椅子に乗って退院する」ことだけ。それなら早く実現したい。

 私は先生にとにかく早く退院できるようにお願いした。そのための努力はなんでもできる。

 YouTubeやTikTokでこの話をしたら、反響がすごかった。

「私だったらそんなに強くなれない。明るくできない」そうよく言われる。

 たぶんそういう人たちは、「SNSで楽しそうに発信している車椅子ユーザーでモデルの葦原海」と、想像の中の「両足をなくした自分」を比べて、無理だと感じるんだろう。

 でも16歳の私は、障がい者にも両足をなくした人にも会ったことがなかった。身近にいない、ネット上で見る機会もない、だから比べる相手もいない。

 自分中心にしか考えていなかったから、シンプルに受け入れたんだと思う。 

2022年12月には文春オンラインでもインタビューを掲載した ©三宅史郎/文藝春秋

好きなように選んで、好きなように楽しむ

「両足を失って、変わったことはなんですか?」

 よく聞かれるけど、あんまりない。

 もともと明るかったから、急に明るくなったわけじゃない。

 健常者とは違う立ち位置、ちょっと変わった状況にはなったけれど、足があってもなくても、私は生まれつき「変わった子」だった。

 我が道を行く系、というか?

 だからって「障がいは個性です」というのは、なんか違うと思うけど。

 自分1人でできる範囲は狭まったし、できなくなったこともある。

 でも、友だち、仕事仲間、親、まわりの人にお願いすれば解決できちゃうことがほとんど。

「あれもこれも、できなくなった」という感覚はない。

 車椅子ユーザーになって、むしろ生きやすくなった。