文春オンライン

「普通にナンパしてきた」16歳で両足を失った“車いすモデル”(25)が、歌舞伎町で“チャラ男”に気付かされた衝撃的な事実

『私はないものを数えない。』より #2

2023/06/03

genre : ライフ, 社会

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自分なりのルールを決めて「もっとよくなるヒント」を提案

 やがて宿泊施設の関係者から、コメントをもらうようになった。

「私はホテル勤務で、車椅子のゲストも対応させていただいています。でも、お部屋でどう過ごしているかはわからないから、とても勉強になりました」

 私はそこまで考えていなかったけど「そうか!」と思った。ホテルや旅館で私も配慮してもらうけれど、入口、フロント、レストランだけで、荷物を運び入れたあと、部屋の中で一緒に過ごすことはない。

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 こっちが発信しないと、部屋を車椅子ユーザー向けにセッティングする側も、どうすればいいサービスになるか、知るきっかけがないと気づいた。

「車椅子ユーザーがちゃんと言わないとダメなんだ」と投稿を増やした。もちろん私は「車椅子ユーザー代表」じゃない。感覚がないけど足がある人もいるし、「バリアフリー」と一括りにまとめようとしても、何がいいかは人によって違う。

〇あくまで1つの意見として言おう

〇自分が正しいとか、自分中心で発信するのはやめよう

〇いつも「反対側の立場だったらどうだろう?」と考えよう

 自分なりには、こんなルールにしている。

 宿泊施設でもレストランでも駅でも、「障がいがあるから、なんとかしてください!」と一方的に要求されたら、困ってしまうだろう。

 ルールや安全性、責任を意識しなければいけないサービスする側の人のことも考えながら、「もっとよくなるヒント」を提案していきたい。 

2022年12月には文春オンラインでもインタビューを掲載した ©三宅史郎/文藝春秋

キャバ嬢スカウトと歌舞伎町のナンパ

 あちこち出張し、日本はバリアフリー先進国というわけじゃないと感じた。

 私は快適に過ごしているけど、車椅子だと行きにくい場所も残っている。

 何より人の心の中のバリアは、まだあるんじゃないかな。

「障がいがある人を見つけたら、どうしたらいいかわからない」とか、健常者同士の差別や偏見とか、いろんな壁がある。

 だから私は、それをぶち壊す仕事を当分は続けるつもりだ。