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噴石に潰され、左ひざはちぎれかけていた…58人が死亡した「戦後最悪の火山災害」で生存者が見た悲惨な光景

source : 提携メディア

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噴火前の御嶽山の噴火警戒レベルは1の「平常」(当時の区分)で、「火山活動に特段の変化はなく、静穏に経過しており、噴火の兆候は認められない」との判定だった。

それが同年9月27日の午前11時52分、突如として噴火した。

この噴火は、マグマで熱せられた地下水が沸騰して爆発する水蒸気噴火だった。水蒸気噴火はマグマ噴火と違って山体の変形や火山性微動がみられないことも多く、予知が難しいとされている。

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実は噴火の2週間ほど前から、御嶽山の剣ヶ峰山頂付近では火山性地震が増加しており、気象庁はその情報を周辺自治体などに伝えていた。しかし、その後は小康状態になったことに加え、火山活動が活発化したことを示す火山性微動は観測されなかったため、噴火警戒レベルは引き上げられないままであった。

紅葉シーズンの山頂は大勢の登山者で賑わっていた

この日は好天の土曜日で、紅葉シーズンがはじまっていたこともあり、大勢の登山者が御嶽山を訪れていた。しかも、噴火した時刻はちょうどお昼どきで、山頂周辺などでランチをとっている登山者も多かった。

たまたまその瞬間に出くわしてしまい、辛くも九死に一生を得た人たちの証言は、あまりにも生々しく悲惨である。以下、新聞報道等からいくつか要約して紹介する。

八丁ダルミにいたときに、地鳴りとともに、なんの前触れもなくドン、ドンという鈍い音が鳴り響いた。100メートルほど先に白い煙が2つ、むくむくと噴き上がっていくのが見え、すぐに周辺が煙で闇に包まれると、こぶし大から畳ほどの大きさもある石が降ってきた。この場所にいてはまずいと思い、噴煙が押し寄せる側とは反対の斜面に逃れようとしたとき、今度は猛烈な熱風が襲ってきた。火山灰で鼻や口、耳が詰まり、熱さも加わって息ができず、死ぬかと思った。ザックを背負っていなかったら、熱でやられていた。全身は灰で真っ白で、足元には50センチメートルほどの灰が積もっていた。やっとの思いで登山道を下ったが、途中の尾根上には、家族連れや若い女性ら100人ほどの人がいた。「助けてくれ」という声も聞こえてきたが、まわりが見えずどうしようもなかった。助かったのは奇跡としか思えない。(63歳男性「中日新聞」)