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噴石に潰され、左ひざはちぎれかけていた…58人が死亡した「戦後最悪の火山災害」で生存者が見た悲惨な光景

source : 提携メディア

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まずはシェルターや大きな岩陰を目指して避難

だが、繰り返していうが、火山に登るからには、噴火に遭遇するリスクは常についてまわる。それを前提としたうえでの「登る」「登らない」の判断は、個々の登山者の責任によるものである。

もし不幸にも登山中に火山噴火に遭遇してしまったら、浅間山や御嶽山などのようにシェルターがある場合は、そこに避難するのがいちばんだ。シェルターがなければ、大きな岩陰などに身を隠すか、山小屋などに避難する。

ただし、先の御嶽山の噴火の際には、直径数センチ~5、60センチメートルの噴石が時速350キロ~400キロメートルで飛び出したと推測され、火口周辺ではそれが雨のように降り注いだという。しかも、なかには軽トラック大の噴石まであったというから、そんな状況下ではどこかに身を隠せたとしても、気休めにしかならないかもしれない。

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火砕流とガスが流れ込みやすい谷や沢沿いをなるべく避ける

噴火がいったん落ち着くか、噴石の危険が低ければ、早急に噴火口から離れて、より安全な場所に避難することだ。御嶽山の噴火時には、人の頭ほどの大きさの噴石が1キロメートル以上離れた場所まで飛んだので、少なくともそれ以上は遠ざからないと安全圏とはいえない。

避難するときは、ヘルメットやゴーグルがあればそれらを着け、体内への火山灰の侵入を防ぐためにタオルなどで目、鼻、口を覆うこと。噴煙であたりが暗ければヘッドランプを点け、ザックは背中のプロテクターになるので、背負ったままにする。避難経路としては、火砕流や火山ガスが流れ込みやすい谷・沢沿いはできるだけ避けたほうがいい。

生き延びるために、とにかくやれることはすべてやるしかない。もちろんスマートフォンで写真を撮っている場合などではない。そんな余裕があるなら、少しでも噴火口から遠ざかるように努めることだ。

遅々として進まない、周辺自治体による避難確保計画の作成

火山活動が続いている山では、噴火はしなくても場所によって火山ガスが噴出しているところがある。有毒な火山ガスの危険があるエリアでは、地元の自治体や観光協会、宿泊施設がホームページなどで情報を流しているので、事前にチェックする。現地では、決められたルートを外れないようにし、立入禁止のルートや危険区域には絶対に入り込んではならない。ガスが噴出していたり、刺激臭が漂っていたりする場所には、むやみに近づかないほうが無難だ。