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「障害者だからと我慢しない」「気持ちをぶつけないと伝わらない」個性豊かな清掃スタッフを束ねるサポーターが心がけていること

source : 提携メディア

genre : ビジネス, 働き方, ライフスタイル

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当初、現場を任された坂川は戸惑いの連続だったという。

「最初にこの人はこういうタイプです、こういう癖がありますっていう表を見せてもらったんです。でもそれは個人情報に関わるのですぐに回収されてしまって、参考にはならなかった。

でもこうも思ったんです。紙の上では病名になっているかもしれないんだけれど、その人が持っている体質と捉えよう、その体質をどげに理解しようかなと。スマホでピッピッとやったら色々と出てくるかもしれないけれど」

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私、勉強嫌いじゃないですかとおかしそうに笑った。

「それならばプロの門を叩けって、就労者支援センターに行ってみたんです。最初は嫌な顔されるかなーって思ったんだけど、行ってみたらすごく感じのいい人だった。(障がい者と接する)経験がないのにやるんですか? ああ、分かりました、私で役に立てるならばどうぞ、どうぞと」

どのような人間がいるのか、どこまで求めるのか聞いた上で助言をしてくれた。最も印象に残っているのは「あなたが我慢してはいけない」という一言だった。

「相手の気持ちを尊重するのはいいけど、自分の気持ちも相手にぶつけなさい、そうしないと伝わらんけんって。

彼ら、彼女らは、この人は遠慮してるんだ、やっぱりぼくたちのことを考えていないって思ってしまう。1つのチームにするには、どんどんぶつかりなよって言われました」

「突然、帰っていいですか」への返答

掃除には手順がある。例えば入り口から最も遠い場所、窓際から始めて、自分たちの跡を消すようにして出ていく。

「マイルーティンというか、手順にこだわりがある子が多いんです。時にそれを崩さなくてはならない。最初は無理ですって言うんです。大丈夫、分かっているから、少しずつ変えなさいって。最初はできんと思う、時間は掛かるかもしれないけれど、習得していけばいい。そうしたら、自分が変われたって思うからと」

坂川の言葉に気分を害するスタッフもいた。

「突然、帰っていいですかって言われたので、ああ、分かった、帰ってもいいよ、その代わり、明日は来いよって。そうしたら、んっ? ていう顔をするんです。今日はメンタルが疲れたんでしょ、疲れて帰りたいのは分かる。これから帰って明日の朝まで休憩すればいい。明日には元気になっているから来いよって」

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