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「障害者だからと我慢しない」「気持ちをぶつけないと伝わらない」個性豊かな清掃スタッフを束ねるサポーターが心がけていること

source : 提携メディア

genre : ビジネス, 働き方, ライフスタイル

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「帰ってきて、ダーッと着替えて、掃除、残っていた洗濯をして、はいオッケーとなったら夕食の準備。夕食の片付けが終わった後は、もう根が生えたようにテレビの前から動かないです。

テレビ大好きなんです。恋愛物以外のドラマはとりあえず見る。恋愛物は、あー、まだぁ、もういいじゃんっ、みたいになっちゃうから。あとはゲームやったり」

「あの子たちが出ていくとき、おばあは泣くと思う」

地方都市において、大学病院は敷居が高いとされている。坂川もとりだい病院で働くまでは、しかめつらの先生や冷ややかな看護師たちばかりだと身構えていたという。

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しかし、実際は違っていた。以前、『カニジル』の裏表紙に坂川が写っていたことがあった。直後、医師らしき男が「カニジルに載っとったね、見たよ、すごいね」と話しかけてきた。

「すいません、掃除のおばあをわざわざ取り上げてくださいましたと答えたら、いい感じだったよと」

坂川は米子の方言で自分のことを「おばあ」と呼んでいる。

「名前も知らないけど、いつも会うと世間話をする先生なんです。ナースの方々も本当にお行儀がいい。ちゃんと患者さん、命と向き合っている感じがする」

とりだい病院とスタッフの雇用期間は5年間。再来年、第1期生が巣立っていく予定だ。

「1期生は最初7人おったんだけど、しんどいですと辞めていく子がいて、今残っているのは2人。おばあも、あなたたちのタイプと一緒に仕事するのは初めてだから、わからんもん同士。

そこは気にせずに何でも言ってくださいからスタートしている。わからんだったら、わからんでもいい。そう言ってくださいと」

あの子たちが出ていくとき、おばあは泣くと思う、今から考えるだけで悲しくなると、微笑んだ。

田崎 健太(たざき・けんた)
ノンフィクション作家
1968年3月13日京都市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学法学部卒業後、小学館に入社。『週刊ポスト』編集部などを経て独立。著書に『偶然完全 勝新太郎伝』『球童 伊良部秀輝伝』(ミズノスポーツライター賞優秀賞)『電通とFIFA』『真説・長州力』『真説佐山サトル』『全身芸人』『ドラヨン』『スポーツアイデンティティ』(太田出版)など。小学校3年生から3年間鳥取市に在住。(株)カニジル代表取締役。今年8月より東京と米子の二拠点生活中。
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