安倍氏との交流で忘れられない秘話
〈安倍さんは潰瘍性大腸炎を治療されてからは食欲旺盛で、虎ノ門のホテル「アンダーズ東京」のレストランでTボーンステーキを平らげたり、お酒もよく飲んではりました。
橋下さんが安倍さんに外遊について、色々質問するのが恒例でね。「トランプはどんな人ですか?」とか「G7の首脳たちとはどんな話をするんですか?」とか。それを横で菅さんが黙って笑顔で聞いている。今では懐かしい光景ですね。2018年は統一地方選の準備があるため、安倍さんだけ参加できなかったんですが、19年にはいらっしゃった。その後はコロナ禍になってしまい、それが最後になりました〉
安倍元首相が凶弾に倒れてから間もなく一周忌を迎えるが、松井氏は安倍氏との交流で忘れられない秘話を明かした。
携帯の留守電に残された安倍氏からのメッセージ
〈あんな凶悪な事件で、安倍さんが亡くなったのは、ほんまに残念で仕方がない。思い出すのは、昨年3月の石川県知事選です。金沢市長の山野之義さんが立候補して、当初、うちの井上英孝が代表を務める「石川維新の会」では、山野さんの推薦を求める声が結構多かった。一方の自民党からは馳浩さんが立候補していたけど、事前の世論調査ではあまり強くなくてね。そんな時に安倍さんから直接電話があって「ちょっと、松井さん、馳さんを頼むよ」と。
党内でも議論が紛糾しましたが、最後は「安倍総理が連絡くれたんやから、馳さんで行こう」と党内をまとめて推薦に踏み切った。結局、僅差で馳さんが勝ちました。
後に安倍さんから留守電に「いや、本当にありがとう」と、あのニコッとした笑顔が想像できるほど嬉しそうなメッセージが入っていてね。折り返しの電話で、少し会話したのを覚えています。今も僕の携帯の留守電には、安倍さんの「ありがとう」の声が残っている。事件の後は悲しくて聞き直すことはできへんかったし、ましてや消去することもできず、そのままにしています〉
6月9日発売の「文藝春秋」7月号と「文藝春秋 電子版」(6月8日公開)では、「維新の野望とは何か」と題して、松井氏が維新の会の政権奪取に向けた想いや、吉村洋文大阪府知事を中心に、自身の引退後に残された維新の会メンバーの今後について語っている。
維新の野望とは何か
【文藝春秋 目次】100年の恋の物語 田原総一朗×下重暁子、谷崎潤一郎、伊藤野枝、山本五十六、関根恵子、オノ・ヨーコ/猿之助ショック! 歌舞伎を守れ
2023年7月号
2023年6月9日 発売
1200円(税込)