“ぐんばやし”の行方は? バヤシ流、別れのエール
郡司が弟のように可愛がっていたのが岡林勇希だ。おかげさまで、多くの人に認知された「#ぐんばやし」の行方も気になるところ。このコラムを読んでくれるであろうファイターズファンのためにも説明すると、ドラフト同期入団で公私ともに仲の良い郡司と岡林の愛称を、スポーツ報知・ドラゴンズ担当のツイッターアカウントで募集したところ複数の応募があり、2人と相談して「ぐんばやし」を採用させてもらった。
岡林は1年前の成人式で「今年はぐんばやしをトレンド入りさせるのが目標」と言い、記者も微力ながら拡散の協力をしていたが、トレンド入りどころか2人のタオルまで発売されて即完。岡林自身は、最多安打、ベストナイン、ゴールデン・グラブ賞を獲得して大ブレイクした。活躍しようが2人の関係性は変わることなく、つかの間のオフもコメダ珈琲店でモーニングしながら新作のシロノワールを食べたり、2月のキャンプ中にはゴルフに出かけストレス発散したりした(スコアは岡林が僅差で勝利)。
トレードが発表された19日の夜。2人の兄貴分、加藤翔平と一緒に買った送別の品を届けにきていた岡林は、郡司のマンションのソファで寝転がってスマホゲームをしていた。「何持っていっていいかわからない」と言いながら荷造りしていた郡司に、突然「リーグ戦再開の日、バンテリンで郡ちゃんの登場曲使うわ! 全部打ったらどうしよっかなぁ?」とニヤニヤしながらバヤシ流の惜別のメッセージを送った。ちなみに日本ハムには梅林優貴という新“バヤシ”候補もいるという。同じポジションのライバルだが、郡司は「(ハム版)ぐんばやしもあり」と言って、ロンリーボーイ・岡林の胸騒ぎを増幅させていた。
ルーキーイヤーから3年半、郡司と接してきた記者が初アーチを見られなかったことを嘆くと「チームメイトや裏方さん、ファンや名古屋の街と離れるのはつらいですけど、バンテリンドームの『ブルーモンスター』とおさらばできるんで、そこは良かった。うまいこと言ったんで、ここだけは(記事で)使ってください。エスコンでたたき込んできます」と、右翼フェンス上段に阻まれた幻のバンテリンアーチを回顧しつつ、新たな球場での活躍を誓った。
「中日ドラゴンズ・郡司裕也」に、番記者として最後の質問を考えていた。早朝ナゴヤ球場で雑談したあと、バンテリンへ向かう郡司に「今の気持ちを郡ちゃんが愛するback numberの曲に例えて教えて。どんな気持ちでこの数日を過ごして、どんな気持ちで北海道に向かうのか知りたい」とお願いすると、「いい質問!」と返ってきた。数時間後、「『スーパースターになったら』で!」と教えてくれた。僕は最初に出てくる「このまま終わってしまうのは、絶対嫌だなって思ってて」という歌詞が、郡司の葛藤を代弁していたように感じた。でも、おすすめは2番のサビ前だという。
君がどこの街に住んでいても、遠くからでもよく見えるような光に――。
北の一番星になり、千葉へ、仙台へ、名古屋へ、郡司裕也を愛する全てのファンへ、明るい笑顔を届けてほしい。
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