また、自治体の支援窓口に直接行く場合、既に誤登録が発覚している自治体の一つは「新たに見つかった748件に、うちの該当者がいるかどうか、デジタル庁から連絡はありません。もし、郵送で通知された人がこちらに来ても、私達も驚くのが最初ということになりかねません。窓口でのトラブルを避けるためにも、できれば知らせてほしい」と担当者は語る。これでは福島市のように市役所が出向いて謝罪し、パソコンを持参して情報を登録し直すというような対応は取れないだろう。
こうした誤登録以外にも、近い将来に混乱が起きるのではないかと、自治体の現場でささやかれている問題がある。というのは、マイナンバーカードの申請は終わったわけではないからだ。マイナポイントが付与されなくなっても、カードを取得するための申請は続いている。
ある自治体の職員は「健康保険証がマイナンバーカードに紐づけられて廃止されたら不安だからと申請する人がかなりいます。マイナ保険証を使うと、医療機関の診療報酬も違うので、受診者にカードを取得するよう勧めているようです」と話す。
マイナンバーカードは、交付されただけでは健康保険証として使えない。マイナポータルのサイトなどで紐づけの手続きを行わなければならない。
ところが、紐づけを支援してくれる窓口は、2023年9月までの設置とされている。政府はあくまでマイナポイントの申請のために補助金を出しているからだ。
「その後の紐づけ作業は誰が手伝うのでしょうか。私達はそうでなくても職員数を減らされて、目の前の仕事で手一杯です。支援窓口の閉鎖後は、職員がやれと言われたら、パンクしてしまいます」と前出の職員は不安がる。
マイナンバーカードに関する様々なトラブル。問われているのは、行政機関への信頼ではなかろうか。
ミスを重視せず問題を拡大させたデジタル庁の“教訓”
公金受取口座の誤登録に関しては、信頼を巡って対応が分かれた。
市民の信頼を失うまいとして、1件のミスから全口座の調査を要請した福島市。デジタル庁は各自治体から報告されたミスを重視することなく問題を拡大させ、国民の信頼を失いかねない事態に追い込まれた。デジタルというスキルも、それを扱う人間によって、どうにでも変わることを、私達に教えてくれる教訓となった。
福島市が誤登録について説明したホームページには、「いいね」が24人から押されている。目黒課長は「私達はできるだけ新しい情報を出そうと、記載内容の更新に力を入れています。それでも『いいね』はほとんど付きません。しかし、今回のミスの報告だけは例外でした。私達は問題を起こし、責任を問われる立場なのに、どういう意味なのか」といぶかしがる。
うがった見方をすると、全国で起きていたミスを明らかにするきっかけを作ったという意味で「いいね」なのかもしれない。