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「最初のログアウト忘れ(2022年7月)の時に対応していれば…」デジタル庁はなぜ自ら“マイナカード誤登録問題”を公表し、調査しなかったのか?

「最初のログアウト忘れ(2022年7月)の時に対応していれば…」デジタル庁はなぜ自ら“マイナカード誤登録問題”を公表し、調査しなかったのか?

マイナカードの混乱、福島に聞く#2

2023/06/15

genre : ニュース, 社会

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 たった1件でもミスがあれば真摯に解決しようとするか、それとも軽視するか。これによって運命が変わることがある。

 マイナンバーカードによる公金受取口座の誤登録問題は、その典型的な事例だろう。

 デジタル庁は自治体から誤登録の情報を受け取っても広く点検しようとせず、何が起きているか分からないまま事態を悪化させた。一方、福島県福島市は1件の登録ミスを把握すると即座にデジタル庁へ全市民の口座情報の調査を依頼した。これがトンデモない事態が進行していたことを発覚させる引き金となり、誤登録の恐れがある口座が全国で748件もあると分かった。もし、福島市が調査を要請していなかったら、危機は水面下で隠されたままになっていた。

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 福島市で誤登録が見つかった経緯は#1で述べた通りだ。2023年4月10日、支援窓口で手続きに訪れた市民が、他人の口座が登録されていると気づいた。市は翌日にデジタル庁へ調査を要請。同庁が全市民の口座を調べた結果、計4件の誤登録が発見された。

 福島市は5月23日、この4件のミスを自ら公表した。全国の自治体で初めてのことだった。

 2022年度中に支援窓口で手続きを行った約6万1500件のうち、たったの4件ではある。しかし、目黒貴裕・デジタル推進課長は「市民は市役所だったら間違いないと信用して来てくれます。1件でも誤りがあってはなりません。もし、ミスがあったら、誠実にお詫びして、きちんと公表する。木幡浩市長のブレない姿勢です。でなければ、市民からの信頼がなくなってしまい、他の業務にも影響が出てしまうのです」と説明する。

待ち時間が分かるよう工夫されている(福島市役所、支援窓口)

福島と異なり誤登録を公表していなかったデジタル庁

 この日、河野太郎・デジタル改革担当大臣も福島市に歩調を合わせて、それまでにデジタル庁が把握していた誤登録の件数を発表した。福島市を含めて6自治体11件。大臣に就任する前の2022年7月から発生していたのに、デジタル庁は公表していなかったのだ。しかも、福島市以外はデジタル庁で全登録口座を調べた結果ではなく、自治体の支援窓口で見つかって、デジタル庁が報告を受けた件数だけだった。

 福島市を除けば、5自治体7件なので、1自治体当たりのミスは1~2件。福島市の4件は突出しているように見えた。だが、これは市民の全登録口座を調べた結果なので、他の5自治体と同じように扱われる数字ではなかった。

 その後、デジタル庁が行った全自治体への調査に対し、窓口で誤登録があったと報告した市区町村は15自治体21件とされた(6月1日時点)。これも全口座を調査した福島市の4件と、窓口で判明しただけの14自治体17件は一緒に扱うべきではなかっただろう。